法華経のこころ(4)

其の瑕疵を護り惜む(方便品)

「智慧のたりない人は、自分の欠点や過ちを明るみにしたがらないものです」。欠点を、思いきって切り捨ててしまう果断な態度が、救いや成長への第一歩となる。

友人のAは、某芸能プロダクションでマネジャーをしている。性格は、いたって明朗。同窓会では、いつもリーダーシップをとってくれる貴重な存在だ。

Aというと、同窓生は、皆ある事件を思い出す。中学も卒業間近い1月。Aが本屋からマンガ雑誌を万引したのだった。本人は黙っていたが、うわさは、すぐクラス全体に。どことなくAを敬遠する空気がしばらく続いた。

そんなある日、昼休みの校内放送が、突然私たちに集合を告げた。首をかしげながら教室に戻ると、Aが神妙な顔で黒板の前に立っていた。そして言った。「ぼくは万引をしました。でも、もう二度としません。こんなぼくでよかったら、また友だちにしてやってください」。ポロポロ涙をこぼしながら、何度も頭を下げた。その瞬間、何人ものクラスメートが駆け寄り、Aの肩を抱いた。拍手が教室全体に満ちた。

優しいヤツ。頭のいいヤツ。私にはさまざまな友人がいる。だが、Aほど“ひたむき”な友は、なかなか見つからない。
(J)

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