栄福の時代を目指して(7) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

「解放の日」の既視感

本連載第5回では、青年哲学徒S・即令君が、科学アカデミーや左翼政党の勉強会に赴いて、先生方と問答をしたという設定でエピソードを書いた。私自身はマルクス主義に詳しいわけではないし、その資本主義批判には今でも意味があると思っている。しかし、この問答は、私が青年時代に父と交わした多くの会話に源流がある。唯物論ないし史的唯物論の限界という認識には、父という1人の人間の実存(研究人生)がかかっていると言って良い。その肩の上に私の視座が成立してきたのである。

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栄福の時代を目指して(6) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

驚愕の世界史的事件

読者の皆様は、映画『スター・ウォーズ』をご覧になったことがあるだろうか。宇宙の銀河共和国を守るジェダイ評議会を中心に共和国の盛衰や再興を描く物語だ。この中の『エピソード3/シスの復讐』における忘れがたい衝撃的なワンシーンとして、共和国のパルパティーン最高議長が実は、悪の中心である暗黒卿ダース・シディアスだったことがわかる映像がある。議長を徐々に信じてきた若きアナキン・スカイウォーカーは、それを知って初めは倒そうとしたものの、心理的誘惑にかかって操られてしまい、議長を逮捕しようとしたジェダイのNo.2(メイス・ウィンドウ)を殺してしまう。この結果、スカイウォーカーは暗黒面に落ちて暗黒卿ダース・ベイダーとなり、他の多くのジェダイも倒されて共和国は崩壊し、暗黒卿が操る銀河帝国へと変化してしまうのである。

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庭野会長の1月

大恩寺(ベトナム寺院)のティック・タム・チー住職、新潟・十日町市の池田克也副市長、日蓮宗波木井山円実寺(山梨)の長谷川喜章住職の3人が1月中に来会、立正佼成会の法輪閣で庭野日鑛会長と懇談しました。それぞれの懇談の様子を紹介します。

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涅槃会 親子の関係の深さをかみしめ 日々懸命に精進を(動画あり)

2月15日、釈尊が入滅時に説いた「自灯明・法灯明」の教えをかみしめ、活き活きと大乗菩薩道を歩んでいくことを誓う「涅槃会(ねはんえ)」が、大聖堂(東京・杉並区)をはじめ全国各教会で開催された。大聖堂には会員約650人が参集。式典の模様はライブ配信(会員限定)された。

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チャールズ・ボー枢機卿が来会 庭野次代会長と懇談

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会共同会長を務めるチャールズ・ボー枢機卿(ミャンマー・ヤンゴン大司教)が2月4日、本会を訪れ、庭野次代会長と法輪閣で面会した。WCRP/RfP国際委のフランシス・クーリア・カゲマ事務総長、同日本委の篠原祥哲事務局長が同行。本会から和田惠久巳総務部長、根本昌廣参務が同席した。

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栄福の時代を目指して(5) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

栄福学・序説の起点――科学主義の陥穽

「栄福学・序説」を、前回述べた議論を起点として進めてみよう。今の世界では、超越的実在を否定するか括弧(かっこ)に入れて物質世界だけを探求する学問(学問類型B:形而下限定学=けいじかげんていがく)がほとんどだ。この世界に慣れた研究者たちには、このような学問のあり方を自明視するあまり、あたかも不可視の世界は存在しないように考える習慣が身に付いてしまっている人が多い。この発想が教育や社会的通念において広がっているために、宗教や精神性は片隅に追いやられてしまった観がある。

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サンアントニオ教会発足 現地の会員が初代教会長に就任 さらなる布教を目指す

米国・テキサス州サンアントニオ市に、立正佼成会サンアントニオ教会が発足した。昨年12月8日には、発足式とケビン・ロシェイ教会長の就任式が教会道場で開催された。オンラインを含めて会員180人が参加し、新しい教会の門出を祝福した。

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<Focus>宗教の枠を超えた多様な活動に感心 本会ローマセンターのアンドリュー・ジェームズ・クリスティさん(56)

長年にわたるサンガ(教えの仲間)の布教伝道によって世界中に教えの種がまかれ、現在、本会は18の国と地域に58の拠点を構える。教えを求め、本会に巡り合った海外会員の喜びや感動の声を紹介する。

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栄福の時代を目指して(4) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

新年の大計:栄福を実現するための包括的学問

皆様は新年を迎えてどのような抱負を持たれただろうか。私は喪中なので正月らしい祝い事は控えたが、この1年と言わず、10年以上にも及びそうな大計を立てた。その核心は、「栄福の時代に向けて」、人々の栄福を実現するための哲学と社会科学の包括的な学問を樹立する、というものだ。この哲学や学問体系を「栄福哲学」や「栄福学」と呼ぶことにしよう。

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栄福の時代を目指して(3) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

動乱の世界:アメリカを支配するポピュリズム

連載『栄福の時代を目指して』2回目では、日本政治に生まれた「栄福政治への夜明け」という可能性について述べた。3回目では、世界全体のビジョンについて述べよう。前者には希望を感じても、世界全体の動向には不安を感じている人が多いに違いないからである。二つの大学で授業において学生に質問の時間を設けたところ、案に相違して、当該の授業内容に関してよりも、今の内外の状況について私の考えを聞きたいという声が相次いだ。例えば、総選挙、兵庫県知事問題、ドナルド・トランプ大統領再選、日米関係、ウクライナ問題、中東問題、韓国の戒厳令布告、シリアの政変……というように。前回、日本政治には総選挙で民主主義回復という曙光(しょこう)が射(さ)したと述べたが、地球全体を見渡すと、混沌(こんとん)としており決して明るい図柄は浮かんでこない。この激動や混沌とした状況が、これまで政治に大きな関心を持たなかった若年層にも、政治的関心を高めたのだろう。

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