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栄福の時代を目指して(8) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
強者の支配こそ正義?
前回は、プラトンのソクラテス対話編を参考に、生成AI(チャット君)や夢中でのトラギアスと青年哲学徒・即礼君の対話形式で書いてみた。書きながら想起していたのは、30代はじめにおいてイギリス・ケンブリッジ大学研修中に聴講したプラトン講義である。同大学では、客員研究員は他学部の講義も自由に聴講できるので、自分の属した社会政治学部以外の講義も、それぞれの建物に通って毎日聴講していた。この大学には古典学部があり、有名なM・F・バーニェト(イギリスの古代ギリシア哲学研究者)らによるプラトン対話編に関する講義も聴いた。講義ではギリシャ語で原典を読んでいたが、場面ごとに説明を加え、生き生きとその様子を語っていて、その対話の場に自分も引き込まれるような臨在感があった。連載でも、そういった感覚を少しでも味わって頂きたいと思い、即礼君の物語に託して関連する箇所をなるべく示していきたい。歴史の面影の漂う雰囲気が多々この大学にはあり、書いてみたい気もするが、今は筆を急ごう。
弘前教会「春季彼岸会」から 青森県つがる市「西の高野山弘法寺」副住職 白戸旦実師が講演 「身口意」の一致を心がけ 自己実現を目指す
3月15日、立正佼成会弘前教会の春季彼岸会が教会道場で開催されました。式典の中で、青森県つがる市「西の高野山弘法寺」副住職・白戸旦実師が、「身口意」の一致を心がける大切さについて講演を行いました。要旨を紹介します。
「バチカンから見た世界」(167) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
ローマ教皇レオ14世はなぜ世界平和を福音宣教の中心に置くのか
宗教の本質的な役割は「人の救い」にある。「救済論」(soteriology)を持たない、あるいは、忘れた宗教は、ただ単なる「イデオロギー」となっていく。現代史において、宗教が国家や民族のイデオロギーとなり、戦争や紛争を誘発した例は多くある。宗教そのものがイデオロギー化し、原理主義、狂信主義、暴力に走ったケースも多い。「地上の地獄」と呼ばれるウクライナやガザでの戦争にも、国家・民族イデオロギーとなった宗教が深く結びついている。「人間の救い」へ向けて、「世界平和」が、その最低条件として浮かび上がってきている。人類が、世界平和への努力なくしては、人間と環境の救いについては語れないという、極限的な状況に直面しているのだ。
新教皇レオ14世の素顔(海外通信・バチカン支局)
報道陣の予想を覆して選出された、新ローマ教皇レオ14世(本名=ロバート・フランシス・プレボスト)。選出から一週間が経過したが、彼自身の発言や彼が20年間にわたり宣教活動を展開したペルーの聖職者や信徒たちの証言を通して、新教皇の「素顔」が少しずつ、浮かび上がりつつある。
カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~ (5) 写真・マンガ・文 平田江津子
数々の出会いが導いた市民団体の設立
カズキが地域の小学校で特別支援学級に在籍していた時、普通学級で多くの時間を過ごさせてほしいと相談し続けました。でも、学校側は「別室での個別学習の方が彼の力を伸ばせる」と主張を曲げず、私たち夫婦は悶々(もんもん)とした日々を過ごしていました。
切り絵歳時記 ~柳田國男『先祖の話』から~ 6月 文/切り絵 ルポライター・切り絵画家 高橋繁行
人は死ねば子孫の供養や祀(まつ)りをうけて祖霊へと昇華し、山々から家の繁栄を見守り、盆や正月に交流する――柳田國男は膨大な民俗伝承の研究をもとに日本人の霊魂観や死生観を見いだした。戦時下で書かれた柳田國男の名著『先祖の話』をひもときながら、切り絵を使って日本古来の歳時記を絵解きしたい。