平和こそ生活の原点 日本国憲法Q&A(11)最終回―― 憲法が「国民のもの」といわれる真の意味は?

日本国憲法は、憲法改正について、(衆参の)「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」(96条1項)という特別な手続きを定めていますが、この「国民の承認」という制度が、憲法の特別な性質をよく示しています。日本国憲法は、「国民のもの」ですから、その改正は国民の承認によって、初めて成り立つのです。国民の承認があって初めて、従来の憲法規定の下ではできなかったことが可能となります。このようにしてみると、私たちの判断が、現在だけでなく、将来の国民にも大きな影響を及ぼすことが分かります。だからこそ、私たちは、憲法のあり方に無関心であってはならないのです。

NHKは、毎年「憲法に関する意識調査」という世論調査を行っています。今年(2018年)の調査によると、「いまの憲法の理念・内容をどの程度知っているか?」という設問に対して、「よく知っている」「ある程度知っている」を合わせて46%、「あまり知らない」「まったく知らない」という人が合わせて49%で、「知っている」と「知らない」がほぼ半々という結果でした。

残念なことではありますが、半数の人が、日本国憲法の理念・内容について「知らない」と答えているのです。おそらく、多くの人々は「憲法」と聞いて、「自分の生活にはあまり関係ない」と思っているのではないでしょうか。しかし、日本国憲法は、私たちの生活の基本となる部分で、多種多様な形で密接に関わっています。

例えば、住む場所や職業を自由に選ぶことができるのは、日本国憲法でこれらが保障されているからです。信条や性別、社会的身分、財産、収入に差別されることなく、18歳に達したすべての人に選挙権が認められています。憲法が選挙の原則を定めているからです。また、人生で必要な基礎的な知識や技能を身につけ、豊かに生きていくためにすべての国民に「教育を受ける権利」が保障されてもいます。

今では当然と思っていることの中にも、かつては禁止され、制限されていたものが多くあります。信仰の自由も、そうしたものの一つです。ある人は、「憲法を読むことで、日本が歩んできた歴史を知るきっかけになった」と言います。憲法ができた経緯や背景を知るには、どうしても戦前の日本に目を向けなければならないからです。当然のことのように感じていた自由や権利が、実は「当たり前のことではなかった」と発見した人もいました。

憲法を読むことは、自分の生きている世界を深く考えることにつながり、結局は自分自身の人生と向き合うことであるかもしれません。そこから、将来の国のあり方、子や孫が暮らす世界を想像してみることも大事だと思います。まずは前文に目を通すことからお勧めします。先の二度にわたる世界大戦の反省に立ち、平和な社会づくりを目指した先人の熱い思いを感じるはずです。そこに込められているいのちの尊厳や、「不殺生」「非暴力」という仏教の平和観につながる精神を受けとめてほしいのです。

憲法改正が議論されている今、改めて憲法について学ぶことが大切になっています。憲法改正をするか否かを決めるのは、私たちです。憲法は、まさに「私たち国民一人ひとりのもの」なのです。

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