「実践的仏教」を探究して 学林創設60周年記念式典ならびに学林合同入林式(動画あり)

大樹59期生の池田委世さん

続いて、大樹32期卒の千葉卓史名古屋西教会長が「宗教の持つ可能性」について質問。これに対し、池田さんは、学林の掲げる「実践的仏教」に言及し、「自己の覚醒・社会の変革・世界の変革」の三つを同時に行うところが特長であり、宗教には世界を変革する可能性があると自身の解釈を述べた。この池田さんの発言を杉野学長が補足。「真の仏教とは自己の目覚めも世界との関わりも全て融合、調和されている世界です。そのような信仰を持つわれわれが社会に関わっていくということが最も大きな可能性だと考えます」と強調した。

また、ベンドレイ博士は、自分の信じる信仰を謙虚に誠実に生きることが重要であり、その信じる心を通して世界の美しさや自分の人生を愛する、それは「菩薩行とも呼べる」と明示。世界を変えるのは、このような「創造的なマイノリティー」であると述べた。次いで小林氏は、自身が研究する「ポジティブ心理学」では感謝や利他的な行動が人々の幸福感=ウェルビーイングを高めるといわれているが、それは宗教が持つ道徳的倫理観の核心部分が科学的にも証明されたということであると主張。現代は「宗教と学問が再び接近し始めた時代」であり、ベンドレイ博士が述べた「創造的なマイノリティー」とは、「皆さんのように宗教性や精神性を理解し、かつ、学問を修め、それが知になるということを宗教と公共の両方の言語で伝えられる、そうした可能性を持つ人だと思う」と語った。

和田惠久巳総務部長

最後に手を挙げたのは、光澍大学科49期生の男性(19)。男性は自身がキリスト教徒として学林に入林したと紹介。本会の活動を1年間学ぶ中で、調和をもって平和を見いだしていく、そして実践をもって平和を具現化していくという姿勢を学んだと報告した上で、「大学で和解学を学んでいるが、宗教者にとっての和解とは何か、教えてほしい」と投げかけた。

これに対し、30年以上にわたり世界の紛争和解に携わってきたベンドレイ博士が回答。宗教者としての和解には多くの方法があると伝えた上で、片方の椅子にはイスラームの指導者が座り、もう片方には仏教の僧侶が座る、そのような難しい対話の状況に身を置く中で、真に自分の宗教を生きている人を目の当たりにしてきたと述懐。「優しいまなざしや声かけ、気配りといった自分自身の信仰からくる慈悲が相手の慈悲を見いだす。そのような聖なる深層(信仰)を介してお互いに分かり合える。そう私は信じている」と語りかけた。