教団付置研究所懇話会生命倫理部会「第23回研究会」 臓器移植法施行から26年 現状と課題学ぶ

講義を通して、参加者は海外と日本の臓器移植制度の相違点や移植医療の実情について学んだ

“人の死”の定義をめぐる議論の口火となった脳死臓器移植問題。1997年の「臓器の移植に関する法律」(以下、臓器移植法)施行から昨秋で26年が経った。

これまでに脳死判定は1000例に達し、臓器提供数は1000件を超えている。2010年の法改正で、家族の承諾による臓器提供が可能になって以降、提供数は徐々に増加してきた。臓器提供の場合に限り、脳死を「人の死」とする考えが一定の水準まで社会に定着した一方で、国内の提供者(ドナー)は世界的にも少なく、移植希望者(レシピエント)の待機期間も長期に及んでいる。

こうした現状に鑑み、立正佼成会中央学術研究所が所属する教団付置研究所懇話会生命倫理部会は3月28日、脳死臓器移植を主題にした研究会を開催した。同懇話会に加盟する教団や、その研究所から21人が東京・港区の浄土宗総合研究所に集い(オンライン併用)、脳死臓器移植の概要とその課題点について学びを深めた。

当日は、『臓器移植医療のこれまでとこれから―看護師として伝えたいこと―』をテーマに、看護師で元都道府県臓器移植コーディネーターの石井賀洋子氏が講義を行った。

石井氏は冒頭、臓器移植の概要と国内の状況を解説した。臓器移植とは「重篤な疾病や事故などにより臓器の機能が著しく低下あるいは臓器を喪失した人に、他者の健康な臓器と取り換えて機能を回復させる医療」と説明し、全てが第三者の善意によって成立する医療行為であると特徴づけた。また臓器提供には「脳死後(脳死下)」「心臓が停止した死後(心停止下)」「健康な人からの移植(生体移植)」があると述べ、「心停止後」では腎臓・眼球・膵臓(すいぞう)の提供に限られるのに対し、「脳死後」では肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球・心臓など多くの臓器や器官が提供できることを紹介した。

また近年、脳死判定後の提供数が増加した要因について言及。旧臓器移植法では脳死の場合、「移植のために臓器を提供する」という本人の意思表示と家族の承諾が必要条件とされたが、改正法では本人の移植に対する肯定的な意思表示(「拒否」の意思表示があれば臓器は移植に使われない)がなくても家族の承諾があれば提供が可能になり、15歳未満の提供や親族優先提供ができるようになったと話した。

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