こども食堂から築く共に生きる社会(8) 文・湯浅誠(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)

画・福井彩乃

地域や社会、世界の「持続可能性」が叫ばれる背景にあるもの

さて、気づけば今年も3分の2が終わりました。この連載もそろそろ終わりを意識する時期に入ってきたと感じます。

これまで、私とこども食堂の関わりや、いわゆる相談支援との関係におけるこども食堂の強みや弱みについて書いてきました。これからは、こども食堂の広がりが持つ意味をもう少し考えて、年末に向かっていきたいと思います。

「終わりを意識する」と書きましたが、こども食堂の広がりはこの言葉と深く関係している、と私は考えています。といっても「一年の終わり」の話ではなく、この地域・社会・世界の終わりです。やや壮大に聞こえるかもしれませんが、とても身近な話です。

2021年の出生数は約81万人でした。統計史上初めて100万人を切ったのが2016年ですから、わずか5年で20万人近く減ったことになります。崖を転がり落ちる勢いで少子化が進んでいます。他方、亡くなる高齢者等は増えていくので、人口の減少幅も年々大きくなっています。結果として、日本の中には、人が全く住まなくなった「消滅集落」が生まれ始めています。「過疎集落」は6万を超えます。中山間地に暮らす人を訪ね歩くテレビ番組もできました。自分が暮らしている地域を見回して「子どもが減ったなあ」「この辺りもいつか人がいなくなっちゃうんじゃないか」と感じる人も多いのではないでしょうか。その時、人々が意識しているのは「地域の終わり」です。

地球に目を転じると、今度は、氷山が溶け、山火事が頻発する中で、人類が今のまま地球に住み続けられるのか、大まじめに議論されています。その時、人々が意識しているのは「文明の終わり」です。

地域単位でも地球規模でも、終わりが意識されるようになってきています。そして同時に、終わらないためには、ずっと続くためにはどうすればいいかを考えるようになってきています。それを「持続可能性」と言います。いろんな分野で「持続可能性」が強調され てきたのは、終わりが意識されるようになった今という時代の考え方を反映しています。

人類の今の文明を終わら せないために必要だと国連が言っているのがSDGs(持続可能な開発目標)の達成です。地域が終わらないようにするために必要だと国が言っているのが地方創生です。創意工夫に満ちた地域づくりと言い換えてもよいでしょう。そして、こども食堂は、一般の人たちが、自分の暮らす地域の未来を憂えて始め、そして広がった創意工夫に満ちた活動です。こども食堂の活動は、持続可能な地域づくりの一環なのです。

そのことは、滋賀のこども食堂のエピソードに表れていました。次号はその話をします。(つづく)

プロフィル

ゆあさ・まこと 1969年、東京都生まれ。東京大学法学部を卒業。社会活動家としてホームレス支援に取り組み、2009年から3年間内閣府参与を務めた。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。これまでに、「こども食堂安心・安全プロジェクト」でCampfireAward2018を受賞した。