大人のSNS講座(8) 文・坂爪真吾(一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)

画・はこしろ

SNSで受けた傷は、SNSでは癒やせない

前回は、「マナーを守りましょう」だけでは、SNSでのトラブルは防げないとお伝えしました。今回は、個人の努力や注意だけでは回避できないリスクがあることを前提にして、どのようにSNSでのトラブルを予防し、対処していくかについて、具体的な方法を解説します。

SNSでのトラブルを予防する上で、最も大切なことは、悪口や批判などのネガティブな投稿について、「見ない」「言わない」「聞かない」ことです。

「最近のSNSは、誰かや、何かを叩(たた)いたり責めたりする投稿が多くて、タイムラインが殺伐としがちだよね」という声をよく聞きます。しかし、タイムラインを殺伐とさせるような投稿をする人たちをフォローしているのは、他の誰でもない、あなた自身です。

タイムラインは、あなたを映す鏡です。フランスの政治家で美食家のブリア・サヴァランの言葉に「普段食べているものを言ってみたまえ。君がどんな人間か当ててみせよう」という格言がありますが、現代社会では「SNSのタイムラインを見せてみたまえ。君がどんな人間か当ててみせよう」と言い換えることができます。

SNSで入ってくる情報は、全て自分で取捨選択することができます。まず、「目の前に流れてくるネガティブな情報は、自分が選んだものである」ということ、そして、「自分の意思で、そうした情報を全て遮断することができる」ことを自覚しましょう。あなたのタイムラインをネガティブな情報の嵐から守れるのは、あなただけです。

まず、誰かや何かの批判・悪口ばかりを投稿・シェア・リツイートしているアカウントは、すぐにフォローを外しましょう。家族や友人、同僚や上司などの仕事仲間であるためにフォローを外せないという場合は、ミュート設定(=フォローしたままで、投稿が非表示にされる)にしましょう。

タイムラインからネガティブな投稿を一掃しても、自分自身がネガティブな投稿をしていたのでは意味がありません。夜中、ネガティブな気持ちをSNSにぶつけるのは一時的なストレス解消になるかもしれませんが、飲酒や過食と同じで、翌朝必ず後悔します。

ネガティブな投稿には、ある種の中毒性と伝播性(でんぱせい)があります。SNS上で他人のネガティブな投稿を見て気持ちが高ぶってしまい、どうしても同じようにネガティブな投稿をせずにはいられなくなった……という経験がある方もいるでしょう。

しかし、「SNSで受けた傷を、SNSで癒やす」行為は、地獄への片道切符です。「ネットの傷は、リアルで癒やす」が鉄則です。顔の見えない不特定多数の誰かに共感してもらうためにネットに書き綴(つづ)るのではなく、きちんとリアル(現実の世界)で、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。

SNSで失礼なことを言われたり、悪意をぶつけられたり、事実と異なる批判をされた場合、どうしても反論したくなります。

しかし、そうした相手に対する最大の攻撃は、反論ではありません。悪意をぶつけられた場合、逐一受けとめずにスルーすることによって、その悪意はブーメランのようにぶつけてきた本人に返っていきます。悪意に反応せず、毎日の生活を楽しんでいる様子や、周囲への感謝などを投稿することが、批判者やアンチに対する「最大の攻撃」になるのです。

ポジティブな内容の投稿は、「魔除(まよ)け」の効果も果たします。子どもや家族、ペットの画像を投稿する人たちは、別に自分の幸せを自慢しているわけではなく、そうすることでSNSで変な人たちが寄ってこなくなるから、という理由もあると思います。

時事ネタやトレンドには絡まないことも重要です。その時に話題になっているテーマや事件に対して、脊髄反射的に投稿してしまうのは、危険です。どんな事件や出来事も、詳しい情報が出揃(でそろ)うまでには、一定の時間がかかります。

リアルタイムで起こっている出来事やニュースの情報を得て、その場で自分の意見や気持ちを発信できる「即時性」がなくなると、SNSを使う楽しみがなくなる、と思われる方もおられるかもしれません。しかし、即時的なツイートをしても、一時的には拡散されるかもしれませんが、誤情報に基づいた発信になってしまった場合、あなたのアカウントの信頼性は下がります。そして、脊髄反射的なツイートに反応する人たちだけにフォローされるようになってしまいます。長い目で見れば良いことはありません。

「ネガティブな投稿はしない」「悪意をぶつけられてもスルー」。こうした基本的な対処法を徹底していてもなお、批判や攻撃が止まらない場合や、炎上に巻き込まれてしまう場合があります。

※次回は、そうした場合の対処法についてお伝えします

プロフィル

さかつめ・しんご 1981年、新潟市生まれ。東京大学文学部卒業。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書に『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』(2020年・徳間書店)など多数。