大人のSNS講座(4) 文・坂爪真吾(一般社団法人ホワイトハンズ代表理事)

画・はこしろ

SNSはコミュニケーションを広げる?

この10年間で、SNSは電話やメールと並ぶコミュニケーションの手段として普及しました。現時点で、どのくらいの人がSNSを利用しているのでしょうか。

日本国内で最も利用者の多いSNSは、LINE(ライン)です。2020年現在、8000万人以上に利用されています。メールや電話の代わりとしてLINEを使っている人は、「LINEもSNSなの?」と思われるかもしれませんが、タイムラインという不特定多数の相手に情報を発信できる機能があるので、立派なSNSの一つです。

LINEは「足がつく」ことが多いツールでもあります。LINEのやりとりを見られて浮気や不倫がバレる、という事態が頻繁に起こっています。不倫をした有名人が週刊誌でLINEのやりとりの内容を晒(さら)されるケースもあります。拙著『パパ活の社会学』(光文社新書)で取材したパパ活で稼ぐ女性の中には、LINEは絶対に使わず、ショートメールのみでパパとやりとりしている女性がいました。

一方、LINEは、文字通りのライフラインにもなります。携帯料金が支払えずに回線を止められても、Wi-Fiのある環境に行けば、LINEでの通話やメッセージの送受信ができるからです。私が運営に関わっている、風俗で働く女性の生活・法律相談窓口「風テラス」にも、全国各地の女性からLINEで相談が寄せられています。

「いつでも・どこでも・誰でも(誰とでも)使える」というメリットがある一方で、「記録が残る」というデメリットがある、それがLINEの特徴と言えます。

ツイッターは、日々の出来事や意見を140文字の「つぶやき」として投稿できるSNSです。日本国内で4500万人以上が利用しているとされています。匿名で様々な意見を手軽に投稿できるため、幅広い世代・職種の人が利用しています。自由な発言の場である半面、炎上やハッシュタグによるデモなど、政治的な意見や誹謗(ひぼう)中傷が飛び交う場にもなっています。感情的な投稿や根拠の不確かな投稿が拡散される傾向もあり、デマやトラブルに巻き込まれないよう、注意が必要です。

フェイスブックは、実名制のSNSです。日本国内の利用者は約2600万人。近年は他のSNSに押され気味ですが、実名のためにツイッターよりは炎上のリスクが少なく、閲覧を制限する機能によって友人限定でのプライベートな投稿もしやすいため、40~50代の利用者数が多い傾向にあります。

インスタグラムは、写真・動画の共有に特化したSNSです。日本国内の利用者は約3300万人。2017年には「インスタ映え」(インスタグラムに投稿した際に見栄えが良い、という意味)という言葉が流行語になりました。以前は若い世代が主な利用者層でしたが、最近はビジネスツールとして幅広い層に活用されるようになっています。

改めて主要なSNSの利用者数を眺めてみると、大半の日本人が毎日何らかの形でSNSに接している、という現状が浮かび上がってきます。

いずれのSNSにも共通しているのは、自分にとって居心地の良い情報空間をつくることができるという点です。自分にとって好ましい友人や知人の近況、心の安らぐ情報や画像だけが流れるように設定し、目障りな情報や自分の価値観に合わない情報は、全てミュート・ブロックしてしまう。言い換えれば、誰もが毎日、「自分の見たいものだけを見ることのできる空間」で一定の時間を過ごしている、ということになります。

しかし、SNSは決して「全世界」ではありません。「自分の見たいものだけを見ることのできる空間」で過ごす時間が一日の大半を占めてしまう状態は、危険です。

現在は、あらゆるSNS上で、デマやフェイクニュース、詐欺情報が日常的に飛び交っています。「自分にとって居心地の良い情報空間」に入り浸ってしまうと、こうした危険な情報にいつの間にか毒されてしまうリスクがあります。

また、少しでも自分と異なる意見や価値観に触れた場合に、「どうしよう」という不安や「許せない」という怒りが過度に増幅されてしまい、攻撃的な投稿を繰り返すようになってしまうこともあります。

※次回は、SNSという「自分の見たいものだけを見ることのできる空間」を「全世界」と勘違いしてしまうことで発生するリスクについて考えていきます

プロフィル

さかつめ・しんご 1981年、新潟市生まれ。東京大学文学部卒業。新しい「性の公共」をつくる、という理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。著書に『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』(2020年・徳間書店)など多数。