TKWO――音楽とともにある人生♪ トランペット・河原史弥さん Vol.1

野心よりも探求心

――「音大に進学する」という思いの先には「プロになる」という気持ちがあったのですか?

それはありませんでした。どちらかというと、自分の好きなことに打ち込むために音大に行かせてもらいました。

プロへの道はとても険しいと感じていたので、そこまで考えられなかったのです。音大への進学を考えていた当時、憧れていた先輩がいました。僕がそれまでに会った奏者の中で、最もトランペットがうまいと感じた人だったのですが、先輩は志望大学に合格できませんでした。コンクールでも入賞に手が届かない先輩の姿を見て、「世の中には、どれだけうまい人がいるんだろう」と驚き、自分はプロになるという自信が持てず、少し冷めた気持ちでいました。

ただ、とても負けず嫌いの性格のせいで、プロを目指す同級生には負けたくないという思いもあったんです。それに、「もっとトランペットがうまくなりたい」という気持ちが強くありました。僕の原動力は「プロになってやろう」という野心よりは、自分はトランペット奏者として、どこまでできるのだろうかという探求心でした。それを追求した結果としてプロになれたのですが、「自分はどこまでできるのだろう」という思いは今も同じで、ずっと僕を突き動かし続けています。

――河原さんの生家はうなぎ屋ですね。家業を継ぐことを考えたことはありましたか?

それは、小さい頃からずっと考えていました。この思いは、親しい人にもあまり言ってはこなかったですけどね。現在は、父と兄が店を切り盛りしていますが、父が働く姿を幼い頃から近くで見てきたので、当然、自分の将来を考える時の選択肢の一つとしてありました。

自分の好きなことを突き詰めたいという気持ちで音大に進学しましたが、在学中も家業への思いが心の片隅にあったのです。ですが、「音楽をやりたい」「自分の力を試したい」という気持ちを捨てることもできず、音楽での就職活動に臨みました。佼成ウインドに内定を頂いたので、音楽への道を進むことを決めました。

プロフィル

かわはら・ふみや 1993年、東京・板橋区生まれ。2016年に洗足学園音楽大学を首席で卒業。優秀賞に選ばれた。同年に、TKWOに入団。第87回日本音楽コンクールトランペット部門3位、第36回日本管打楽器コンクールトランペット部門2位に入賞した。