弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(7) 文・相沢光一(スポーツライター)

報告・連絡・相談の習慣

現在、ロータスの3年生にはキャプテン1人、副キャプテン3人の計4人の幹部リーダーがいるが、2年生と1年生にも4人ずつのリーダー(幹部と呼んでいる)がいる。この1・2年の幹部8人は将来のキャプテン、副キャプテン候補としてリーダー修業をしているわけだ。

さらに、毎年夏になると2年生の中からはポジションリーダーも選任される。オフェンスに5人、ディフェンスに3人の計8人が、ポジションリーダーとして各ポジションの指揮を担う。2年生が選出されるのは、リーダーとして必要な力を身に付けるための指導を、3年生が現役でいるうちに受けさせるためである。

こうした、各学年の幹部とポジションリーダーの存在が、チームの情報共有に大きな役割を果たしている。

ロータスでは、全体の練習が終了した後、全部員の前で3年生の幹部がチームの現状や目標などを語る。そして、最後に小林監督が、練習を見て気づいたこと(部員が自信をもてるような前向きの発言が多い)をひと言、ふた言語り、一旦終了となる。

その後、学年ごとに分かれ、各学年の幹部がその日の練習で気になったことを話す。さらにその後、今後は各学年の幹部12人が集まってミーティングが行われる。学年によって、練習の内容や課題は微妙に異なるわけで、ここでは幹部同士で情報を共有するのだ。この時、学年ごと、トラブルの芽が生じていないかも確認する。

ロータスはクリスマスボウル3連覇中の強豪であり、部員全員の意思が統一された素晴らしいチームと思われるだろう。だが、72人もの部員がいる大集団には、さまざまな個性が入り混じっている。もちろん気持ちが通じ合った部員が大部分なのだが、中にはウマが合わない者もいるわけだ。一般社会でも人間関係で悩む人は多いが、ロータスにも同様の事態が起き、モチベーションの低下につながる可能性がある。そんなトラブルの芽が生じた時も、幹部同士が話し合い、対応策を共に考えるのだ。いわば、「報連相=ほうれんそう」の徹底である。練習後の幹部のミーティングは、ロータスという組織を健全に保つための報告・連絡・相談の場でもあるのだ。

なお、ここで小林監督からアメリカンフットボールの練習ならではの興味深い話を聞いたので紹介しておきたい。

試合では部員全員が勝利のために一丸となって戦うが、練習は違うという。大会が近づく時期はスクリメージライン上でオフェンスとディフェンスが対峙し、数多くのアサイメントを実戦で使えるよう練習を繰り返すことになる。両者はいわば仮想敵であり、ワンプレー、ワンプレーが勝負なのだ。想定通りボールを前進させることができればオフェンスの勝ち、前進を食い止めればディフェンスの勝ち。小林監督によれば、この時、練習の終わらせ方に最も気を遣うのだそうだ。

オフェンス、ディフェンスのチーム同士が、試合を想定した実践的な練習を行う。小林監督は、審判としてプレーを見守りながら部員を指導にあたる

「ナイスプレーが出た時など、できるだけ精度が高い状態で練習を終えるように心掛けています。勝負ごとですから、当然、負けて終わる側は気分が悪くなることもある。特にハードヒットを受けた選手は、相手に対するわだかまりを残すこともあります。そういう状態で練習を終えるのは良くないですから、そうした気持ちが起きにくいプレーを区切りにして終えるようにしています」と語る。

こうした配慮が必要なのは、部員たちが真剣に練習に臨んでいる証しともいえるが、練習では人間関係にひびが入る事態を常に想定しておかなければならないわけだ。幹部はこのような部分も含めて情報交換し、トラブルにつながることがないよう努めているという。

ところで、部活経験豊富な3年生・2年生が幹部を務めるのは理解できるが、入部したばかりの1年生は性格も把握できていない状態。どのようにして幹部を決めるのだろうか。

「中学時代の部活でキャプテンを務めていた者、あるいは入学直後の1年生のための合宿で練習に臨む姿勢が良いと判断した者の中から4人を選びます」(小林監督)

ただ、この4人がずっと幹部を務めるということではないという。

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