男たちの介護――(13) 母への感謝 激動の中で見えた幸せ
二人の母へ少しでも恩返しを
ただならぬ物音に目を覚ました。夜中である。岡田利伸さん(68)は跳び起きると部屋を出た。洗面所へ通じる廊下の片隅に義母のチヨさん(当時85歳)が倒れているのを見つけた。
「お母さん、大丈夫ですか?」と駆け寄った。「大丈夫」。チヨさんの声はしっかりしているものの、足元はふらついていた。岡田さんが体を支えようとすると、チヨさんは「自分で行けるから、大丈夫」と告げ、寝室へと戻った。翌朝、チヨさんは「寝ぼけていたのかしらね。急に方向感覚がおかしくなって」とつぶやいた。
チヨさんに異変が現れたのは7年前。胆石性急性胆のう炎の手術を受けてからたびたび体調を崩すようになった。外出する機会も減り、足腰も弱くなってしまった。歩行器を使わないと真っすぐ歩くことさえままならない。いつしか岡田さんがチヨさんの介助に当たるようになった。後ろから腰を支えて洗面所や浴室へと連れて行く。普段から気丈に振る舞っていたチヨさんだが、物忘れがひどくなり、「これだから年は取りたくないねぇ……」とこぼした。
医師から折り入って話があるという連絡があったのは、チヨさんが夜中に倒れてから数日後のことだった。チヨさんの膝は変形しており、認知症の疑いがあることが判明した。要介護度は2。現在は心配するほどではないが、近い将来、急速に症状が進行する可能性があることを知らされた。
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