男たちの介護――(1) 50年間連れ添った妻が脳腫瘍に 突然始まった介護

脳腫瘍を切除する手術を行ったのは5月、さらに、放射線治療が1カ月半続いた。退院後、ユキさんの体力は急激に衰えていく。歩くことはおろか、食事やトイレに行くことも自力ではできなくなった。

次男は車で1時間ほどの所に住んでいる。家庭もあり、手伝いを頼むことはなかなかできない。介護度の再認定を申し込もうとするたびに、ユキさんの容態が急変し、それどころではなくなってしまう。

そうした中、ユキさんを心配し、週に何度も訪ねてくれたのが、立正佼成会の教会で主任を務める竹中とみこさん(63)である。ユキさんの世話に追われる房雄さんの話を聞いてくれ、おかずを作って持ってきてくれることも多かった。竹中さんのちょっとした心遣いがうれしかった。人には話せないことも、竹中さんには打ち明けられた。「寝たきりになって、おむつをしないといけなくなるかもしれない。うまくできるかどうか不安で……」。つい何げなく漏らした言葉にも、思ってもみない答えが返ってくる。「おむつになったら、私が手伝うから。大丈夫、安心してくださいね」。うそでもよかった。そんなことまで言ってくれる、その一言に房雄さんの胸は熱くなった。

洗濯や掃除、食事の準備、トイレの介助、入浴代わりにユキさんの体を拭く毎日。一日一日が重く過ぎていく。〈ユキの面倒を見てあげられるのは、自分しかいない。でも、いつまで続けられるだろうか〉。

テレビや新聞で報じられる高齢者への虐待が増加していることを見聞きするたび、人ごととは思えなかった。ベッドから数メートルしか離れていないトイレにすら、ユキさんを支えて行くことは容易ではない。

体力的にも精神的にも、限界のようにも思えた。〈いつか、俺も手を上げてしまうのではないか〉。
(つづく)

※記事中の人物は、仮名です