講演録

あんな悲しい思いを二度と誰にもさせたくない 被爆体験証言者・吉田章枝氏

私は、女学校4年生、16才でした。3年の2学期から、中国電力大洲工場に動員されていました。戦争の長期化で、大人の男性は兵士となって戦争に行き、人手が足りないため、終戦の1年前、昭和19年8月、国による学徒勤労令が出され、中学生以上の生徒はみんな、強制的に、軍需工場や建物疎開などの勤労奉仕に行っておりました。それを学徒動員といいます。

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逃れられない苦も仏さまの贈りもの 教恩寺住職・やなせなな氏

人はなぜ死に、遺(のこ)された家族はなぜあれほど悲しむのか。奈良県にある教恩寺で生まれ育った私は、幼い頃、お寺に運ばれてくるご遺体を見て疑問に感じていました。祖母からは「人はみんな死ぬけど、仏さんの国に行くから大丈夫なんやで」と教えられていましたが、仏壇をのぞき込んでも仏さまの国は見えません。葬式を取り仕切るお坊さんになれば、答えが見つかるかもしれない、そう思い僧侶の道に入りました。

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食育――頭と身体にいい話 順天堂大学医学部助教・李玉棟氏

現代医学によって、食生活の、心や体の健康への影響がかなり解明されてきています。一方で、その影響について普段から意識する人はあまり多くありません。食に関する知識を基に正しい食生活を実践する人を育てる「食育」の観点から、心身の健康についてお話しします。

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被爆の記憶を受け継ぎ、非戦の誓いと平和の尊さ語る 広島被爆体験伝承者・細光規江さん

私は広島市の被爆体験伝承者として被爆者の証言を受け継ぎ、これまで多くの方々を前に講演を行ってきました。これからお話しするのは、12歳で被爆した笠岡貞江さん(85)の証言です。

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近代立憲主義と日本国憲法 早稲田大学大学院教授・長谷部恭男氏

憲法で国家権力を制限する考え方を、広い意味での立憲主義といいます。この考え方は、中世のヨーロッパにもありました。当時は、キリスト教が社会に大きな影響力を持ち、庶民から皇帝まで、皆がキリスト教の価値観に基づいて暮らしていました。ですから、政治権力も一つの考え方によって縛られていたわけです。

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気候変動に挑む世界の取り組み 「気候ネットワーク」東京事務所長・桃井貴子氏

深刻化する気候変動問題

この100年間で、地球の平均気温は約1度上昇しています。原因は、人間の活動による温室効果ガスの排出で、特に化石燃料の使用で排出される二酸化炭素(CO2)です。“たった1度”と大したことではないように思われがちですが、世界中で気候変動の影響だと考えられるような事象や異常気象が発生し、深刻さを増しています。

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地球と共生する文明の未来を考える 京都造形芸術大学教授・竹村眞一氏

日本では、地球の環境問題や気候変動が、平和と結びつけて語られることはそれほどありませんが、実は大変密接な関係があります。近年のことでいえば、2010年から2012年にかけてアラブ世界で起きた民主化運動の「アラブの春」が挙げられます。

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全ての子がスペシャル 一人ひとりに目を向ける「特別支援教育」の理念を今こそ 関西国際大学教育学部教授・中尾繁樹氏

特別支援教育の専門家として、これまで3000校以上の小・中・高等学校を訪問し、40万人以上の子供たちと会ってきました。一人ひとりが何につまずいているか、どんな接し方をしたらいいかを理解し、先生や親にアドバイスをする仕事を20年以上続けています。

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自死・自殺を仏教の視点から考える 仏教学者・佐々木閑氏

仏教には「創造主」がいません。私たちは偶然、輪廻(りんね)の世界に生まれた生物であり、全てが苦しみであるという世界で悩みながら生きる運命を背負っています。これは、生まれながらに、誰かから生きる意味を授かったわけではないということです。同時に、生きる意味を自分自身で見つけるしかないということでもあります。ですから、自分の人生が誰かにつくられたものでない以上、私たちは生きることに負い目を感じる必要はありません。生きる権利はありますが、生きる義務を負わされているわけではないのです。

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誰も自殺に追い込まれることのない社会へ――地域のつながりが命を守る NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」代表・清水康之氏

自殺は亡くなり方が衝撃的であるため、最期ばかりが注目されてしまいます。しかし、特別な人が特別な問題を抱えて、突然に自らの命を絶つのではありません。NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」では、自殺で亡くなった方のご遺族から聴き取り調査をして、自殺の実態について分析しています。この結果から、人が自殺に至る、追い込まれるプロセスには一定の規則性があること、自殺で亡くなった方は平均四つの問題を抱えていたことが分かりました。

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