気候変動に挑む世界の取り組み 「気候ネットワーク」東京事務所長・桃井貴子氏

深刻化する気候変動問題

この100年間で、地球の平均気温は約1度上昇しています。原因は、人間の活動による温室効果ガスの排出で、特に化石燃料の使用で排出される二酸化炭素(CO2)です。“たった1度”と大したことではないように思われがちですが、世界中で気候変動の影響だと考えられるような事象や異常気象が発生し、深刻さを増しています。

例えば、北極域の気温上昇は大きく、北極圏に属するグリーンランドの氷河は、現在、科学者たちの予想をはるかに上回る速さで解けています。このまま全ての氷河が解けると、その影響で海面は約7メートル上昇するといわれています。また、ツバルやキリバス共和国など海抜の低い小さな島国では、国そのものが水没してしまう危機に直面しているのです。

他にも、北極海の海氷が海水温の上昇で解けていることが気流に影響を及ぼし、北半球の大陸各地に大寒波が到来したこの冬の現象なども、地球温暖化の影響である可能性が指摘されています。昨年の夏には南アジアで広範囲にわたって大洪水が起き、インド、ネパール、バングラデシュでの被災者は4000万人超に上ったと報じられています。

集中豪雨が続く地域がある一方で、干ばつによる被害も深刻化しています。例えば、アメリカのカリフォルニア州では大干ばつの影響でトウモロコシや小麦が不作になる年もあります。大規模な不作は世界全体の食糧危機につながるため、私たちにとっても決して人ごとではありません。

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