【「アース・カンパニー」代表理事・濱川明日香さん】雇用者の働きがいを高め 仕事と生活の調和を推進する 

組織運営の課題をITツールを駆使して改善

――この働き方を採用して、課題はありましたか

会議は全てグループ電話で行っているため、スタッフが一堂に会する機会が少なく、どうしても全体のまとまりや、コミュニケーションを円滑にするための工夫が必要でした。一緒にランチに行ったり、飲み会を開いたりする機会もないですから、お互いに相手のことをよく知らないという状況も生まれやすくなってしまうのです。

ITツールを使った遠隔会議 写真提供=Earth Company

ですから、会議では冒頭に、「最近、どう?」と声を掛け、それぞれが仕事以外の近況を話し、場が和んでから本題に入るようにしています。互いの様子を知り、言葉を交わすことができれば、自然と信頼関係は増します。このほか、スタッフ全員が集まる総会を日本とバリ島で年に1回ずつ行っていますが、そこでのコミュニケーションも大切にしています。

もう一つの課題は、全スタッフが常に団体の最新情報を把握している環境をいかにつくるかということでした。これは、それぞれの仕事の状況がお互いに見えにくいために生じるもので、ITツールを使って改善を図っています。具体的には、現在の業務ごとにグループをつくり、チャットでの意見交換やToDoリストによる業務遂行の確認によって、誰が何の仕事に取り掛かり、今どういう状況にあるかを全体でシェアできるようにしました。報告の時間も短縮でき、効率化につながっています。

――雇用形態としてフルタイムで働く人よりも、パートタイムの人が多いそうですね

スタッフ10人中、8人がパートタイムです。それぞれの生活の状況や本人の希望を考慮することが、実際、ハイパフォーマンスにつながっています。また、アース・カンパニーでは、他の仕事を兼ねる「複業」を認めていますから、それも要因かもしれませんね。ちなみに、仕事とは成果が求められ、責任を伴うものですから、「副業」ではなく、あくまでも「複業」という言葉を使っています。

フルタイムだと、気持ちを100パーセント、アース・カンパニーに向けられます。そういう人はもちろん必要ですが、全員がフルタイムだと社会貢献事業に関する情報しか入ってこなくなりがちです。一方、別の業界でスキルを磨く複業者がいると、他の業界の最新情報に触れることができ、参考になる考え方や多種多様なツールの情報を入手することが可能になります。ここが「複業」を採用する、お勧めポイントです。

パートタイムの採用は、業務の領域を増やす運営上のメリットがあります。アース・カンパニーでは、パートタイムの給与は、1日8時間を業務に費やすフルタイムを基準にして、その人が何時間費やしたかを割合で示し、算出しています。ですから、例えばフルタイムの50%の時間で働くリクルーティングが得意な人とマーケティングが得意な人の2人を、フルタイム1人分の人件費で雇用できます。さまざまな技能を持った人が増える分、多くの領域で濃密な成果を生み出すことができ、団体の総合力が高まるのです。

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