【東京理科大学研究推進機構総合研究院・関澤愛教授】健康志向が防火につながる 高齢者と火災の意外な関係

住宅防火、都市防災などの専門家である関澤教授

毎年、多くの高齢者が火災で命を落としている。高齢者が引き起こす火災の原因の一つが、秋や冬に欠かせない暖房器具だ。65歳以上の高齢者が人口の27%を超える超高齢社会の日本で、高齢者は住宅火災にどう備えたらいいのか。高齢者と火災の関係に詳しい東京理科大学研究推進機構総合研究院の関澤愛教授に聞いた。

火災による高齢者の死亡率は実は減少している

――火災と高齢者には、どのような関係性がありますか

火災は、高齢化問題と切っても切れない関係にあります。普通、音や臭いで火災に気づくことが多いのですが、高齢になると認知力が衰えてくるので気づくのが遅れる、さらに、とっさに身体を動かすことができないために逃げ遅れることが、高齢者が火災で亡くなる主な要因となっています。

「フェスク」2013年3月号 火災による年齢階層別死者発生状況(クリックして拡大)

住宅火災では、人口10万人あたりにおける年代別の死者数の割合で見ると、高齢になるほど死亡率が明確に高くなっています。しかし、興味深いことに、過去30年間で火災による高齢者の死亡率は一貫して減少し続けているのです。

――増えているとばかり思っていたのですが、減っているのですね。それは、なぜですか

医療技術の向上と健康志向の高齢者の増加が関係しています。同じ年代の高齢者の健康状態を、10年間にわたって観察した研究データを見ると、10年経っても高齢者の体力がさほど衰えていないという結果が確認できました。病気や寝たきりで家族や親族のお世話になったり、介護を受けることで社会の負担になったりしないよう、生涯にわたって元気で過ごそうと努める高齢者が増えているからです。こうしたことが、火災に気がついたときに火を消す、消防署に連絡する、逃げるといった行為に結びつき、火災による死亡率が減少していると思われます。その意味では、緊急時にも俊敏に対応できるよう、日頃から健康維持を図ることが命を守ることにつながっており、これは生活全般において重要なことと言えます。

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