【「アース・カンパニー」代表理事・濱川明日香さん】雇用者の働きがいを高め 仕事と生活の調和を推進する 

一人ひとりへの寄り添いが仕事の成果を高める

――こうした働き方を採用することは、一般企業でもできるでしょうか?

それぞれが自分の好きな場所で仕事をし、働く時間帯も時間数も自身で決めるといった働き方を採用することは、組織の規模が大きくなればなるほど簡単ではないと思います。業種にもよるでしょう。ただ、どんなに社員が多かったとしても、それぞれの生活状況を考慮し、できる限り寄り添っていく工夫はできるのではないでしょうか。人材の確保が大きな課題になっている現代ではむしろ、「できない」と言っていられないでしょう。

例えば、社内に託児所をつくる、また勤務中に授乳できる環境を整えるといったことが実現できたら、働きたい女性にとっては、これまでよりも早く仕事に復帰できるかもしれません。初期費用はかかりますが、社員は安心して働けます、会社にとっても育ててきた人材を確保でき、長期的には有益であるはずです。同時に、働きやすい環境をつくる企業に、優れた人材が集まっていくと思います。

――アース・カンパニーを運営していく上で、スタッフに対して最も大切にしていることは何ですか?

“人”を大切にし、それぞれの状況を互いに尊重し合って信頼関係を築くことを心がけています。それはスタッフだけでなく、支援先に対しても変わりません。

また、スタッフの採用にあたっては、学歴やキャリアよりも私たちの活動やビジョンにいかに共感を持っているかを最重要視します。つまり、世界が抱える課題の解決や、そのための社会起業家への支援にどれだけ熱を持って臨めるかということですね。

アース・カンパニーでは、開発途上国の人々との信頼関係を大切にしている 写真提供=Earth Company

それをベースにして面接し、働き方についてもじっくり話し合います。こちらの条件を一方的に押し付けるのではなく、相手の現在の状況や働き方の要望も聞きます。何事もスタートが重要ですから、しっかり話して尊重し合うことから始めるようにしているのです。

会社などでは、近親者が亡くなった時の忌引日数は、戸籍上の関係によって決まっているのが一般的ですが、アース・カンパニーでは話し合って決めるようにしています。亡くなった人との関係性は一様ではありませんし、悲しみの度合いも違うからです。ここでも当人の事情を酌むようにしています。だからといって、社会常識を超えるような人はこれまで出ていません。

生きていれば、誰もが何かしらの問題を抱え、困難な状況にも直面します。困った時はお互いさま、なのです。信頼があれば、人は助け合うことができ、その信頼関係は仕事上でも活かされます。事情を考慮してもらったことで、他のメンバーや組織に対する感謝の気持ちも生まれます。基本的なことですが、皆が仲良く、気持ちよく働ける職場づくりを、これからもスタッフと対話を重ねながら続けていきます。

プロフィル

はまかわ・あすか 米ボストン大学を卒業し、外資経営コンサルティング会社に入社。その後、ハワイ大学大学院で、太平洋島嶼(とうしょ)国における気候変動の研究により修士号を取得。2014年に夫の濱川知宏氏と共にアース・カンパニーを設立した。現在、3人の子育てをする傍ら、アース・カンパニーの代表理事を務める。

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