利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(61) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

ロシアのウクライナ侵攻

コロナ禍がなお続く中、2月24日にウクライナへのロシアの侵攻が生じて世界が震撼(しんかん)している。理由はともあれ、ロシア一国の判断による他国への武力侵攻は国際法違反に他ならず、これを許したら、世界に戦争が次々と起こりかねない。ナチス・ドイツのポーランド侵略を想起させる深刻な事件であり、それが第二次世界大戦の起点となったように、世界大戦への導火線になることすら憂慮される。

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バチカンの平和外交とロシアの我田引水(海外通信・本紙バチカン支局)

ロシアのプーチン大統領は3月18日、モスクワのルジニキ・スタジアムで「クリミア併合」の8周年を祝う集会を開いた。クリミア併合を国際社会は認めていないが、プーチン大統領は参加した約20万人の聴衆に対し、「私たちは、何をなすべきか、正確に知っている。どのようにして、誰を相手にしてか、だ」と発言した。

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一人ひとりが「志」を持ち、いろいろな「優秀さ」が並び立つ社会を 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院長・上田紀行氏

近年、大学の学生たちの気質が変わってきました。特に感じるのは、自分は人からどう見られているのかと、周囲の評価ばかり気にする学生が増えたことです。「人から変な人だと思われたくない」「人に受け入れられたい」――そう思って、なるべく自分の個性を出さないようにするあまり、〈自分は本当はどんな人間なのか〉〈この一生で何をやりたいのか〉といった、とても大切なことを見失っているように思います。

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