バチカンから見た世界(28) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「人身取引反対世界デー 教皇とアジア宗教者平和会議」

7月30日は、国連が定めた「人身取引反対世界デー」。ローマ教皇フランシスコは同日、バチカン広場での正午の祈りの席上、現代の人身取引に言及し、「この現象は醜く、残忍で犯罪行為だ」と非難した。

この中で、「数千人に及ぶ大人の男女や子供たちが、労働力、性の対象、臓器提供のために搾取され、罪なき犠牲者となっているが、われわれは、その現象に慣れてしまい、あたかも、普通の出来事のように考えている」との見解を表し、人類の課題として早急な対応と解決への努力を促した。

一方、アジア宗教者平和会議(ACRP)は7月20日から22日まで、フィリピン・マニラにある聖トマス大学で「人身取引反対のための女性宗教者国際会議」を開催。「諸宗教における女性の役割を追求することによって、家庭での価値を評価し、女性や子供の人身取引をなくしていく」努力を検討した。これについて、教皇庁外国宣教会(PIME)の国際通信社である「アジアニュース」や「バチカン放送」が24日に伝えた。

この会議について、バチカン放送は、「諸宗教共同体、人権擁護団体の代表者が、現代の人身取引の非人間性を分析した」と報道。会議では、「世界で人身取引の犠牲になっている人の総数が4500万人に及び、その3分の2がアジア人」との指摘がなされた。「グローバル・スレイバリー・インデックス2016」の統計をもとにした数字だという。ACRPフィリピン委員会のリリアン・シソン事務局長は、人身取引がなくならないばかりか、頻繁に行われている原因として「技術の進歩、世界のグローバル化、格差の拡大」を挙げ、「現代の人身取引は、世界で最も利益を挙げることができる産業となっている」と指摘した。会議では、貧困生活のために、斡旋(あっせん)業者に提示された金銭に釣られて自身の子供や家族、親戚に売る両親、母親、祖父母の状況や問題点についても討議された。

参加者からは、「アジアにおける人身取引の防止や取り締まり法制度に乏しく、効果的なものがない」との告発の声が上がった。バチカン放送は、カトリック女子修道会の国際総長会議によって創設された人身取引廃止のための女性組織「タリタ・クム」(フィリピン)を紹介。シスターのセシリアン・エスペニッラ氏が、「現代の人身取引は、あらゆる宗教の教えと価値観に反しており、人類に対する犯罪、神に対する冒とくである」と非難していることを報じた。

子供の支援活動を行う国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」はこのほど、「2017世界子どもレポート『奪われた子ども時代』」を発表。この中で、「世界の106カ国で6万3251件の人身取引に関わる事件が摘発されており、そのうちの1万7710件が子供か少年を対象した事件、1万2650件が女の子を対象」としたものだったと明らかにした。また、奴隷制は貧困諸国のみならず、欧州連合(EU)内においても、少なくとも1万5846人が犠牲になっていると報告されており、そのうちの76%が女性、15%が未成年者だという。人身取引の目的は、性的搾取が67%、労働力としての搾取が21%を占めている。世界全体で、搾取がもたらす利益の総額は約320億ドルと試算されている。

さらに、国連児童基金(ユニセフ)は最近、2015年と2016年の2年間に、世界の約80カ国で両親や大人に付き添われず、単身で移住する子供たちの総数が30万人に達したとの統計を公表した。2010年に比べ、5倍に増大したという。彼らが、世界中で人身取引を行う斡旋業者の格好の餌食になっていることは確かだ。