DJボウズの音楽語り(9) 文・戸松義晴(浄土宗心光院住職)
画・花本彰
MEUS SONHOS DOURADOS
今回ご紹介するのは、日本のカフェやレストランなどで耳にすることの多いボサノヴァのアナログレコードです。ボサノヴァにはポルトガル語で「新しい」という意味が含まれていて、日本でいえば演歌の全盛期にニューミュージックが出てきたように、ブラジルで新しいタイプの音楽として1950年代に生まれました。
ボサノヴァと言えば、「ボサノヴァの神様」と呼ばれたジョアン・ジルベルトや、彼とともに「ボサノヴァの創生者」といわれたアントニオ・カルロス・ジョビンが有名です。私が初めて聴いたのも、ジョビンが作曲し、ジョアンの妻であったアストラッドが歌う「イパネマの娘」だったと思います。世界的にヒットしたので、皆さんも一度は耳にしたことがあるでしょう。私はドーナツ盤のレコードを買いに行きました。
この曲のレコーディングには諸説あって、私がレコードを買った頃には偶然の産物だったと言われていました。プロデューサーが、ポルトガル語しかしゃべれないジョアンではなく、英語を話せるアストラッドに、試しに歌うことを呼びかけたのがきっかけだそうです。彼女はプロではありませんでしたが、その歌声を聴いたプロデューサーが採用しました。自分が歌うはずだったジョアンは、怒って帰ってしまったそうです。
そんな「イパネマの娘」を少しだけ味わえるアルバムが「MEUS SONHOS DOURADOS」(邦題「あこがれ」)。これはボサノヴァのミューズ(女神)と呼ばれたナラ・レオンのアルバムです。ここに収録されている「イパネマの娘」はリミックス版なので、また違った味わいがあります。また、皆さんにボサノヴァを紹介するのに、とても分かりやすいレコードだと思います。ナラ・レオンの代表的なアルバムではありませんが、あえてこちらのレコードを選びました。
収録曲は、ボサノヴァ調にアレンジされています。中でも、「Moonlight Serenade」「Tea For Two」は日本のCMなどで使われており、ジャズである原曲との違いを比べやすいです。
私は、ボサノヴァ調のアレンジが心地よく聴こえるんですよね。原曲は、ドレスやタキシードを着るレストランやパーティー会場が思い浮かび、眠くなってしまいます。特に、私はドライブ中に音楽を聴くので、ボサノヴァ調の曲だと、太陽の照る海辺でさわやかな風に当たっているような気持ちになり、心地よく運転できるんです。
ボサノヴァは、ハワイアンと通じるものがあると感じます。どちらも、体を横に揺らしたくなり、それが私には合うんです。
それに、ボサノヴァは聴く音楽の幅を広げるきっかけにもなります。私の場合、進んでジャズを聴いていませんでしたが、ボサノヴァを聴くようになった時、アレンジされている曲を聴くと、原曲も聴いてみようかなと曲を調べることがあって、私にとってはいい刺激をくれるジャンルでもあります。
アルバム「MEUS SONHOS DOURADOS」
https://mf.awa.fm/3tCEPMb
「ハウ・アバウト・ユー~彼女はカリオカ~イパネマの娘」
https://mf.awa.fm/485VWFg
「Moonlight Serenade」
https://mf.awa.fm/3Rw4fTM
「Tea For Two」
https://mf.awa.fm/3GYtY2u
プロフィル
とまつ・よしはる 1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学、大正大学大学院を経て、ハーバード大学神学校で神学修士号取得。現在、浄土宗心光院住職、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会理事長、浄土宗総合研究所副所長、国際医療福祉大学特任教授を担っている。全日本仏教会理事長、日本宗教連盟理事長などを歴任。趣味は音楽鑑賞(ソウルミュージック)