DJボウズの音楽語り(8) 文・戸松義晴(浄土宗心光院住職)

画・花本彰

CHRISTMAS PORTRAIT

今年もクリスマスの季節がやってきました。ということで、今回はクリスマスソングが収録されているアナログレコードを紹介します。

数ある中でおすすめするのはカーペンターズのアルバム「CHRISTMAS PORTRAIT」です。カーペンターズは、カーペンター家の兄リチャードと妹カレンが組んだデュオです。第3回でザ・マーヴェレッツの「PLEASE MR. POSTMAN」を紹介した時にカーペンターズがカバーしていることに触れました。カーペンターズはオリジナル曲もありますが、カバー曲も多く、このレコードもほとんどがカバー曲です。

カーペンターズの「CHRISTMAS PORTRAIT」

カバー曲でも、カーペンターズのアレンジが効いていて、カレンの歌声とメロディーが重なるとホッとする音楽になるんです。クリスマスの時期になると、あちこちで聴かれるような曲が詰まっています。このレコードには、オリジナルの曲も入っています。それが「MERRY CHRISTMAS DARLING」。カーペンターズが歌う曲の中でもなじみがない人も多いと思うので、ぜひ、クリスマスソングの一曲として聴いてみてください。

私にも、クリスマスと聞いて一般的に想像されるような、ツリーを飾り、ケーキを食べ、プレゼントをもらった記憶があります。ですが、私の家はお寺です。キリスト教の行事であるクリスマスに対して、成長するにつれて「お寺なのにこういうことをやっていていいのかな」と思うようになり、中学生ぐらいで戸松家ではクリスマスのイベントをすることはなくなりました。私の子供が小さい頃も行っていましたが、やっぱり、根付くことはありませんでした。

カーペンターズといえば、もう一枚紹介したいのが、アルバム「NOW&THEN」です。その中の「YESTERDAY ONCE MORE」は、歌詞が沁(し)みるんです。「幼い頃、ラジオを聴いて好きな曲が流れるのを待っていた。その曲が流れると一緒に口ずさんで笑顔になれた」という歌詞なんて、まさに私の学生時代そのものです。小学生の時からラジオで音楽を聴き、自分の好きな曲が流れるまで今か今かと待っていて、流れると思わずニヤッとしていました。「全ての良い思い出がはっきりとよみがえる。泣いてしまうことさえある。あの頃のように」と、曲を聴くとそれに紐(ひも)づいた思い出がよみがえるというのは、本当にそうですよね。初恋の思い出や失恋の苦み、ビートルズを聴くと東京オリンピックを思い出すなど、あらゆる曲と思い出がつながっています。普段からいろんな曲を思い出しているわけではないのですが、「YESTERDAY ONCE MORE」を聴いているとあの曲は、この曲は……、と思い出に浸ってしまうんです。

このアルバムのもう一つの聴きどころが、「YESTERDAY ONCE MORE」から「Fun, Fun, Fun」へと続く曲のつなぎ目で車のエンジン音が流れて、「Fun, Fun, Fun」の終わりにはラジオみたいにセリフが入って次の曲にいく、この流れがいいんです。「YESTERDAY ONCE MORE」だけでなく、この流れで聴いてみてください。

そして、「YESTERDAY ONCE MORE」といえば、私の中で日本のフォークグループのバンバンが歌っている「『いちご白書』をもう一度」とリンクします。この曲は、映画のポスターを見て、昔の恋人との思い出がよみがえるという曲です。歌詞も比較してみてください。

♪ 今回のおすすめ視聴
アルバム「CHRISTMAS PORTRAIT」
https://mf.awa.fm/48q9vzk

「MERRY CHRISTMAS DARLING」
https://mf.awa.fm/481QLGx

「YESTERDAY ONCE MORE」
https://mf.awa.fm/3GPi8r7

アルバム「NOW&THEN」
https://mf.awa.fm/41s9lVM

「『いちご白書』をもう一度」
https://mf.awa.fm/3TtszIw

プロフィル

とまつ・よしはる 1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学、大正大学大学院を経て、ハーバード大学神学校で神学修士号取得。現在、浄土宗心光院住職、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会理事長、浄土宗総合研究所副所長、国際医療福祉大学特任教授を担っている。全日本仏教会理事長、日本宗教連盟理事長などを歴任。趣味は音楽鑑賞(ソウルミュージック)