弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」日本一3連覇の軌跡~(1) 文・相沢光一(スポーツライター)

高校アメリカンフットボールの日本一を競う「クリスマスボウル」で、初出場初優勝から3連覇の快挙を果たした佼成学園高校「ロータス」。関東地区の強豪校に敗れ続けてきた「ロータス」が、いかにして負けないチームへと進化していったのか。長期連載でスポーツライターの相沢光一氏が解明していく。

大逆転劇で見せたチームの底力

2018年12月24日、高校アメリカンフットボール日本一決定戦「クリスマスボウル」が、晴天のヤンマーフィールド長居(大阪市)で行われた。

対戦したのは佼成学園「ロータス」と立命館宇治「パンサーズ」。関東王者の佼成学園は、この試合に3連覇がかかっていた。対する関西王者・立命館宇治は3度目の日本一への挑戦だ。過去2回はいずれも関東代表に僅差で敗れており、悲願の初優勝を期して試合に臨んでいた。

開始早々、ゲームの主導権を握ったのは立命館宇治だ。攻守とも鋭い動きを見せ、第1クオーターで3本のタッチダウンを奪った。スコアは21-0。立命館宇治の選手のプレーには初優勝にかける強い思いがあふれ、その勢いに佼成学園が飲み込まれているようだった。

その後も立命館宇治の流れは続き、第3クオーター終了時点のスコアは33-14。点差は19だ。

佼成学園が逆転するには3本のタッチダウンが必要になるが、残り時間は第4クオーターの12分。絶望的な点差に思えた。しかし、ここからの佼成学園は攻守とも、これまでとは見違えるような動きを見せるようになる。

プレー再開後、1分もたたないうちにタッチダウン(2ポイント・コンバージョンに失敗したため得点6でスコアは33-20)。その5分後にも2本目のタッチダウン(キック失敗で得点6。スコアは33-26)。佼成学園の猛反撃に浮足立ったのか、立命館宇治にはミスが目立ち始める。そして残り3分44秒に3本目のタッチダウンで33-33の同点に、その直後にはファンブルリカバータッチダウンのビッグプレーが出て、33-39と逆転に成功した。試合はそのままタイムアップ。佼成学園は奇跡的ともいえる大逆転で3連覇を決めたのである。

この時の心境を26年前から指導に当たってきた小林孝至監督(50)はこう語る。

「試合後、記者から“あれだけの大差をつけられながら諦めなかったのはすごい。気持ちを立て直すため、どんな言葉がけをしたのか”と聞かれました。でも、私は特に気合を入れるといったことはしませんでしたし、いつも通り、戦術面のことを考えていただけです。そんな言葉がけをしなくても、誰ひとりとして諦める者はいなかったし、動揺もしていませんでしたから。自分たちの本来のプレーをすれば、絶対逆転できると信じていたんだと思います」

小林監督はその質問を聞いて、むしろ“なんで諦めるという発想が出てくるのか”と思ったそうだ。試合の流れや点差を見て、対応する戦略や戦術を考えるのは監督やコーチの役割、選手は自分の力を信じて最後まで全力を尽くしてくれればいい、という考えがあるからだ。それに何より、佼成学園はプレーすることが楽しくて仕方がない集団になっている。手強い相手と戦い、厳しい局面を迎えた時ほどワクワクするという。諦めるという発想が入り込む余地はないのだ。

ただ、小林監督はこうも語った。

「初優勝した時も連覇した時も、いいチームができたという手応えはありました。が、3連覇した時の選手たちを見ていると、競技力だけでなく精神的にもさらにたくましくなっていると感じました。思い描いていた指導とチームづくりがやっとできるようになったと思っています」

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