『利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割』(24) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

実際はどうだったか?

その願いは実現しただろうか。残念ながらそうではなかった。私の知人である神道研究者・鎌田東二氏は、平成という年号を聞いた時、「平治」の年号をすぐに想起して、保元の乱(1156年)や平治の乱(1159年)が起こるような「乱世」にこれから突入するのではないかという、嫌な予感を持ったという(『世直しの思想』春秋社、2016年、3頁)。今となっては、その時代感覚の鋭さに敬服する他はない。

まず平成2年(1990年)に湾岸戦争が起こり、その翌年には日本でもバブル経済が崩壊した。その10年後の平成13年(2001年)にはアメリカで同時多発テロが勃発して、アフガニスタン戦争やイラク戦争が起こって、日本も自衛隊をイラクに派遣した。これらは過激派組織「イスラーム国」の出現につながっていく。残念ながら戦争が再び起こっていったわけだ。

さらに平成19年(2007年)にはリーマン・ショックによる世界的金融危機が起こった。勝利したはずの自由市場経済システムが大きく動揺した。

日本では自民党が分裂して平成5年(1993年)に細川連立政権が成立した。平成10年代には自民党小泉内閣が郵政民営化などの経済的自由主義路線(ネオ・リベラリズム)を推進して人気を博したが、平成21年(2009年)には鳩山・民主党政権が成立した。そして平成23年(2011年)には東日本大震災が発生し、福島で深刻な原発事故が起こった。その後、自民党に政権が戻って現在に至っている。安定していた自民党政権期が終わって、その後、左右の大きな振れを繰り返しているわけだ。

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