おもかげを探して どんど晴れ(5) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

画・笹原 留似子

おじいちゃんと孫

10年近く前になるでしょうか。納棺の現場に伺って、とても驚いたことがありました。

私は亡骸のそばに座って、納棺の準備をしていました。その時、小さなお孫さんが駆け寄って来たかとを思うと、突然おじいちゃんの亡骸(なきがら)から「ドスッ」と音がしたのです。見ると、その子がおじいちゃんにキックをしていました。

突然のことで私は驚き、何が起きたのかを理解するまでに少し時間がかかりました。現場にいた大人の人たちに「罰当たりな」と怒られたその子は、部屋の外へ追い出されてしまいました。

納棺中、その子が、なぜおじいちゃんにキックをしたのかがずっと気になっていましたが、答えが出ないまま、着付けを終えて棺(ひつぎ)に安置する時間になりました。

別の部屋に棺が置いてありましたので、取りに行こうと部屋の戸を開けました。すると、その子が立っていました。正確には、戸は少し開いていたことを考えると、戸の隙間からおじいちゃんの納棺の様子をうかがっていたことが想像できました。

その子は黙って私の前に立っていました。「どうして、おじいちゃんにキックをしたの?」。そう尋ね、私はしゃがんで彼の顔を下から覗(のぞ)いてみました。彼は答えました。「ぼくは、いつもおじいちゃんと一緒だったんだ。寝る時も、幼稚園に行く時も帰る時も、お風呂も、ご飯を食べる時も、全部。それなのに急におじいちゃんがいなくなって、何日もいなくて、やっと帰って来たと思ったら、近付いたらダメと言われて……。おじいちゃんは、白いハンカチを顔に当てて、ずっと寝ているし、知らない人がいっぱい来て泣いているし、ぼくも悲しくなって……」。そして、こう続けました。

「おじいちゃんは、ぼくが悪いことをするといつもゲンコツしたんだ。だから、ぼく、おじいちゃんに悪いことをして、ゲンコツをしてほしかったんだ。でも、おじいちゃんはゲンコツしなかった」

彼は大勢の大人の様子を見ながら、自分の世界の中で精いっぱい大好きなおじいちゃんに何が起きているかを考えていたようです。

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