法華経のこころ(18)
世間の法に染まざること(従地涌出品)
「大菩薩たちは俗世間の中に住みながら、俗世間に渦巻くさまざまな迷いに影響されない」。
その日、私たちは二十年ぶりで小学校の同窓会をもった。恩師を囲み、卒業後の経緯や現在などを報告し、かなり現実的になった30代半ばの人生観を語り合った。散会時間近くになって恩師が言った。「どんなちっぽけなことでもいい、それぞれが今、置かれた立場や環境の中で、どんな人間になってみたいかの夢や目標を語ってほしい」。
即答できる者、できない者といろいろだったが、それでも先生は楽しそうにじっと聞いていた。「本物の信仰者になりたい」。私はそう答えた。今になってよく言えたものだと思う。
一巡した後、先生が話した。「ありがとう、今、みんなが発表してくれた夢や希望を、これからの環境の変化や自らの甘えに決して負けることなく『純粋培養』していってほしい。それが、今度会う日までの宿題だよ。報告を楽しみにしている」。そして、私たちは5年後に再会する約束をして別れた。
月日が無益のうちに流れ行き、約束の日まで、あと1年を残すのみとなってしまった。4年前の自身の語った志とは裏腹に、現実の生活は迷いをただ際限なく繰り返しているにすぎない。恩師が与えてくれた宿題の、そのとてつもなく大きかったことに、私は今、やっと気づいたばかりだ。
(M)
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