法華経のこころ(15)

涅槃(ねはん)の楽を得せしむ(薬草諭品)

「(仏は)万物と大調和した境地に達して得られる最高の幸福を獲得させてやるのです(と宣言します)」。最高の涅槃というのは、すべての現象(万物)と仲よしになるところにあり、生命がなんのさわりも妨げもなく、のびのびと展開していくところにある。

小学生の頃、よく『思いやりのある子になろう』というクラス目標があった。その頃の私には、思いやりとは、何か漠然としていて、ものすごく大きなもののような気がしていた。言葉では説明ができないものだった。

校庭にはウサギ小屋、小鳥の小屋、アヒル小屋があり、花壇には花があふれていた。それぞれ、当番制で世話をする係がいた。自然にあふれた場所でもあったので、ウサギの当番になると、その前日は、やわらかく、おいしそうな草を探しに野山へ行った。アヒルにエサをやる時間が少しでも遅くなると、「アヒルさん、ごめんね」と謝った。朝、登校すると誰もがそれぞれの小屋をのぞいて、「おはよう」と声をかけた。当番になるのが待ちどおしくて仕方がなかった。

小学生の頃には、「思いやり」は言葉ではなかった、と今思う。人に触れる時と同じように動植物に触れること。アヒルやウサギの気持ちになることがごく自然にできた。

大人になり、「思いやり」を言葉で説明できるようになった。でも、その一方で自分中心の心も大きくなってしまったようだ。
(A)