幸せのヒントがここに――仏典の中の女性たち(5) 文・画 天野和公(みんなの寺副住職)

その修行では、まず真っ先に自分を念じる対象とします。それから対象を徐々に広げていきます。親しい人へ。見ず知らずの人へ。嫌いな人へ。私を嫌っている人へ……。どんどん難しくなっていきますね。しかし、この修行の土台は、最初にしっかりと自分への慈しみを確立することです。

私たちは他人の心は見えませんが、自分の心は見ることができます。コントロールすることもできます。だからこそ、自らを証拠として「すべての生命は幸福を求めている」ということを学んでいけるのです。

「私が幸せでありますように」。いかがですか? こう口にしてみて、素直に、「ああ、そうだな。私は幸せになりたいな」と温かい気持ちになれるでしょうか。なにか違和感や恥ずかしさ、引っ掛かりがありますか? 後ろめたさ、どうせそうなるはずがないという卑屈さ……、いろんな感情が生まれるかもしれません。

それらはとても貴重な気づきです。その感情を、善悪の判断をせずそのまま味わって頂きたいと思います。そして、その後ろにある「それでも私は幸せになりたがっている。幸せになっていいんだ」という思いまでしっかりと感じられたなら、周りの方への言動もおのずと変わってきます。

自分の気持ちを大切にできなければ、他人の気持ちを大切に受けとめることはできない。対人援助の場に立つ機会のある私も、このことは常に自分に言い聞かせ、お守りとしています。

参考文献:『南伝大蔵経』十二巻相慶部経典有偈篇

プロフィル

あまの・わこう 1978年、青森県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業後、夫と共に仙台市に単立仏教寺院「みんなの寺」を設立した。臨床宗教師でもある。著書に『みんなの寺のつくり方』(雷鳥社)、『ブッダの娘たちへ』(春秋社)、『ミャンマーで尼になりました』(イースト・プレス)など。現在、臨床宗教師に関するマンガを制作中。