法華経のこころ(6)

諸苦の所因は貪欲これ本なり(譬諭品)

「すべての苦の原因は何であるかといえば、貪欲(とんよく)こそ実にその根本であります」。欲望そのものを仏教は否定しない。ただ、貪(むさぼ)り、執着するようになった時、それが、たちまち個人の苦の原因になると考える。

かつて取材した教育者教育研究所の某県大会で、印象に残る話を聞いた。通信簿を手渡された子供たちの表情あれこれ--。

例えば、秀才のA君。いつも悲壮な顔を見せる。オール5に近くないと、がっくりうつむいてしまう。そして、クラスメートの成績を異常に気にする。だれかれなく通信簿をのぞきこむ。それでいて自分の成績は決して教えない。時には、職員室を訪れ、「先生、ぼく何番だった?」。

『点取り虫』。いつしかA君には、こんなあだ名がつけられてしまった。軽蔑の目が、周囲から彼に向けられた。

一方、B君は、2と3が半々のわんぱく。だがある学期、3科目に4がついた。彼は、机の上に通信簿を広げ、自慢し始めた。周りの生徒も、やんやの喝采を浴びせた。
オール5願望を貪欲とは言わない。「でも成績にとらわれたA君は、どこかビクビクしていて、学校生活も楽しんでいない」と先生は悲しそうに言った。
(S)