DJボウズの音楽語り(7) 文・戸松義晴(浄土宗心光院住職)

画・花本彰

CIRCUS TOWN

私にとってのJ-POPであり、青春時代を彩っていたのは、シュガー・ベイブ、サディスティック・ミカ・バンド、大滝詠一、荒井由実、高中正義……、そして、山下達郎です。

それぞれについて話すと語りきれないので、特に、思い入れがあって紹介したいのは、山下達郎ですね。レコードは全部買いました。1953年生まれ、私と同い年です。年齢もあるかもしれませんが、作る音楽にアメリカンテイストを感じて胸が躍ります。本連載の読者の中には、私がシンパシーを感じる理由を少なからず分かってくださる方もいると思います。

山下達郎というと、毎年かかる「クリスマス・イブ」がどの年代にもなじみがあるでしょうか。「Down town へくり出そう」の歌詞で思い浮かぶ「DOWN TOWN」ですかね。この曲は、シュガー・ベイブや山下達郎というより、女性ボーカルのEPOのイメージが強いかもしれませんね。そして、「クリスマス・イブ」の強い印象から、山下達郎の曲に、冬のイメージを持たれている方もいると思いますが、私は昔から断然、夏です。

私が最初に山下達郎の歌声を聴いたのは、シュガー・ベイブのボーカルとして歌っていた「SHOW」です。プロデューサーは、大滝詠一。確かラジオで聴いたんですが、今までの日本の音楽と違うな、と思いました。ソウルミュージックに通じるものを感じたんです。その時はどうしてそう思ったのか分かりませんでしたが、後にアメリカの音楽に影響を受けていることを知りました。

その後に発売されたアルバム「CIRCUS TOWN」は衝撃的でした。A面はニューヨーク、B面はロサンゼルスで録音されたものです。その当時の日本人で、A、B面を違うところで録って、それもニューヨークとロサンゼルスでなんて、画期的ですよね。

「CIRCUS TOWN」のレコード

私はA面に惹(ひ)かれ、中でも、「WINDY LADY」は前奏のベースでやられました。大音量で聴くと、お腹(なか)の中まで響くって感じで。日本人でもこんなファンキーで、ソウルフルな音楽を作って、歌い方もすごいなと思いました。

そして、「WINDY LADY」の次に入っているスローバラードの「MINNIE」もいい曲なんですよ。間奏のトランペットが格好よくて。

昔はよく、友達に頼まれてセレクトした曲のカセットテープを作る際には、山下達郎の曲を多用していました。要望を聞いて、『夏』『彼女に愛を伝えたい』『友達とドライブ』といったテーマを決め、それに沿った曲をセレクトしました。

そのほかにも高中正義を入れたり、山下達郎も好きなビーチ・ボーイズを入れたり、ドライブにピッタリな曲なんですよ。それらの曲のつなぎに使っていたのが、山下達郎の「I LOVE YOU」。ひたすら「I LOVE YOU」と言っている曲なんですが、転換に使いやすかったり、ロマンチックな雰囲気を醸し出して、次のラブソングを引き立たせてくれたりもするんです。

自分用にも作って、友達と車で飲食店に行ったり、ディスコに行ったりする車中で、リズムに合わせて体を揺らして、踊りながら過ごした時間がとても懐かしいです。

今、1970年代から80年代に日本でつくられた都会的なポップミュージック「シティ・ポップ」がブームになっているようですね。当時は、そんなふうには呼ばれていなかったと思いますが……。あの時代の曲は色あせていないものがいくつもありますよね。山下達郎の曲も、今聴いても、時代を超えて聴けるというか、古臭さを感じない魅力があります。

プロフィル

とまつ・よしはる 1953年、東京都生まれ。慶應義塾大学、大正大学大学院を経て、ハーバード大学神学校で神学修士号取得。現在、浄土宗心光院住職、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会理事長、浄土宗総合研究所副所長、国際医療福祉大学特任教授を担っている。全日本仏教会理事長、日本宗教連盟理事長などを歴任。趣味は音楽鑑賞(ソウルミュージック)