利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(44) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

画・国井 節

暗雲立ち込める政治

アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染して入院し、陰性にならないうちに退院して選挙活動を再開した。イギリス首相、ブラジル大統領と同じように、コロナ問題を軽視した国家指導者たちは、次々と自らも感染し、感染者数の増大により経済が停滞して、手痛い失敗をしている。

日本でも、新型コロナウイルス対策の失敗がおそらく一因となって前首相が辞任したが、後継政権も新しい対策はほとんど何も打ち出さず、逆に入国拒否の緩和のようにさまざまな行動制限を解除しようとしている。

実際には新規感染者数はあまり変わらずに推移し、累計感染者数は積み上がって、10月5日にはついに中国を抜いてしまった。国際的なデータの分析によって、感染者が少ない国の方が経済的ダメージは少なく、経済との両立を目指して検査数を絞るなどの方法で感染対策に力を入れなかった国の方が経済的ダメージは大きいことが明らかになっているから、これは憂慮すべきことだ。

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