庭野光祥次代会長に聞く――『宗教協力が育む力』(1)

光祥次代会長

立正佼成会の庭野光祥次代会長は大聖堂での主要な式典で導師をつとめ、会員への講話を通して教化・育成にあたるほか、世界平和の実現を目指して国内外で諸宗教対話・協力活動に尽力している。現在、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会の国際共同議長を務め、また、「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)の理事でもある。

今年2月にはKAICIIDの第22回理事会に出席するため、サウジアラビアの首都リヤドを訪問した。『宗教協力が育む力』と題して諸宗教対話・協力に尽くす、その思いを伺った。3回にわたって紹介する。

KAICIID理事として諸宗教、諸文化間の対話・協力を推進

――KAICIIDの理事会に出席するため、2月17日から20日までサウジアラビアを訪問されました。どのようなことを感じられましたか

KAICIIDは2012年に、当時のアブドッラー国王陛下の提唱を受けて、サウジアラビアとオーストリア、スペイン、さらにオブザーバーとしてバチカンが加わり、これらの国によって設立されました。オーストリアのウィーンに本部を置き、世界のさまざまな課題を解決していくため、諸宗教、諸文化間の対話・協力を推進しています。サウジアラビアはKAICIID創設をリードした国ですが、入国に厳しい制限を設けていたため、これまで特に他宗教の宗教指導者が簡単に訪問できる国ではありませんでした。そのような意味でも今回の訪問は大きな意義がありました。

一方で、KAICIIDは、本部を置くオーストリアのウィーンで人々からサウジアラビアの出先機関だと誤解され、難しい状況に置かれてきました。背景には、欧州で高まっている「イスラームフォビア」(イスラーム恐怖症や嫌悪)の影響があり、その標的とされ、批判されているのです。職員もサウジアラビア人ばかりかのように思われているようですが、実際には多様な国、文化、人種のスタッフが働いています。当然、理事もイスラーム各派の方だけでなく、キリスト教、ユダヤ教、仏教、ヒンドゥー教など諸宗教者で構成されています。

KAICIIDを取り巻くこうした厳しい状況下で、サウジアラビアで理事会を開くことは、これまで以上に誤解を招きかねず、難しい選択だったと思うのですが、女性の社会進出の推進や入国制限の緩和など、サウジアラビアの改革と、理事たちの「提唱国で理事会を開きたい」との希望が重なって、今回初めて実現しました。

理事会の開催で今後どのような影響があるか、今はまだ想像できませんが、ユダヤ教をはじめ諸宗教者がイスラームの聖地の守護者である国王陛下に謁見(えっけん)したことは、KAICIIDの多様性を表すものであるとともに、サウジアラビアの諸宗教対話の可能性が開かれていることでもあり、宗教間・文化間の対話に取り組む上で、大きな意味を持つと思います。諸宗教者の方々と共に訪問できたことに感謝し、それを心から誇りに思います。

――サルマン・ビン・アブドルアジーズ国王陛下と謁見されました

その日は、ギリシャ正教会主教のメトロポリタン・エマニュエル師が理事会の議長としてごあいさつされた後、国王陛下からお言葉を頂きました。

私たち一人ひとりに歓迎の意を表してくださり、多様な宗教間・文化間の対話と共生の理念を強固なものにして、寛容の価値観を広げ、過激主義やテロリズムが起こらないようにしていくことがKAICIIDの役割だと期待を寄せられました。

国王陛下は、主にエマニュエル師、ファイサル・ムアンマル事務総長のお二人とやりとりをされていましたが、懇談の間じゅう、資料や原稿もご覧にならず、KAICIIDの活動について意見や感想を述べられていました。そのご様子から、KAICIIDをよく理解されているという印象を持ちました。それだけ期待してくださっているのだとも感じました。

2月20日、光祥次代会長はKAICIIDの理事としてサルマン国王に謁見(KAICIID提供)

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