おもかげを探して どんど晴れ(21) 文・画 笹原留似子(おもかげ復元師)

画・笹原 留似子

幸せをつかむ民話――運幸(うんこう)さま

大昔から、“運幸さま”という神様がいるそうです。運幸さまを逆さから読むと「幸運」です。幸せを手に入れるためには、運がないとつかめないそうですから、運が先に来て「運幸」なのだそうです。

運幸さまは、気ままなので不定期に現れます。いつ来るのかは、誰にも分かりません。大昔から人々は、運幸さまに、家の中で腰を下ろしてもらおうと一生懸命、家の中を掃除していました。そうです、運幸さまは清潔な場所にしか腰を下ろさないからです。運幸さまが腰を下ろした家には、とんでもない幸せが訪れると言われています。運幸さまは長い髭(ひげ)を生やし、着物の丈と袖はとても長く、引きずって歩いているのだそうです。玄関、窓、時には風呂場からも入ってくると言われています。

運幸さまが通り過ぎてしまう家には、次のような特徴があります。何でも「面倒くさい」と言う。「後でいいや」とすべきことを後回しにする。「自分が不運なのは、あの人のせいだ」と何でも人のせいにする。イライラしている。よく嘘(うそ)をつく……などです。

通り過ぎてしまうのには大きな原因があります。部屋の状況を見ると、ごみや汚れた衣類が散乱していて、空気がよどんでいる……。机の上も汚れていて、使用した食器もそのままで消しゴムのカスだらけ……。このような部屋には、狸(たぬき)の幽霊が住み着くと言われており、汚れた場所が増えていくと巣をつくり仲間を呼び、部屋の中の汚れた場所は全て狸の巣ができて部屋を乗っ取られているからです。

狸の幽霊が住み着いた家で過ごしていると、とにかく眠たくなるそうです。ゴロゴロして、動きたくない。光にも当たりたくないのでカーテンは閉めっぱなしになっているはずです。それは、その人の気持ちの問題ではなく、狸のせいです。でも、掃除を怠けたその部屋の主(あるじ)に原因があります。狸のいる部屋には、運幸さまは入りません。すぐ目の前を通っても、通過します。もったいないことです。運がそこまで来ていたのに、逃してしまいました。

運幸さまは、朝日と西日に当たるのが好きで、甘いお餅、お酒が好物だと言われています。運幸さまが滞在している証拠に、昔は食に困らなくなると言われていました。運幸さまの大親友の食神(しょくじん)さまが来るからだと言われています。

ここまで来れば、どれだけ長く滞在してもらえるかということになります。ですから、昔から人々は家の中をきれいにし、自分たちが食する前に手を合わせて感謝し、運幸さまと食神さまに感謝をして過ごしていたと言われています。二人の神さまは、謙虚で感謝を忘れない人が好きだと言われています。

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