【ルポ】苦難乗り越える人々の力に 一食研修ツアーでスリランカ紛争帰還民支援事業視察

居住地からわずか50メートルの距離に地雷原が広がる

平和の尊さ 胸に刻んで

続いて一行は、受益者の家庭を訪問し、農地や井戸を見学した。農業従事者が多い北部では、井戸が暮らしの生命線。落花生や長豆を栽培するカマラ・ディビさん(58)は、農業収入が上がり、家を建て直すことができたと笑顔を見せた。

帰還民の生活再建は確実に進んでいる。しかし、同じ国に暮らす人間同士が激しく争った過去は、社会的な課題ばかりでなく、人々の心に大きな傷痕を残した。

アマナ・デイシーさん(46)は、今年1月、地雷撤去が終わり解放された地区に住み始めた。一家4人が住む簡易シェルターから、わずか50メートル先には「地雷注意」の赤い警告看板がいくつも並ぶ。デイシーさんは「地雷の爆発音を聞くたび、内戦中の爆撃を思い出して体が震えます。今も恐怖と貧困にあえぐ家庭があることを知ってほしい」と訴える。

内戦で最愛の息子を亡くした人や避難所で生まれ育った子供、戦闘で顔に傷を負った青年――。現地の人々の笑顔の奥にある悲しみに触れた一行は、改めて平和の大切さを心に刻み、祈りを込めた「一食運動」の実践を誓い合った。

隊員の女性会員(66)=苫小牧教会一食推進委員長=は、「『一食』の献金、JENの活動、現地の人々の意欲。この三つがそろって支援が成立するのだと実感しました。これからも、多くの人に『一食運動』をお伝えしていきます」と決意を新たにする。

同ツアーの隊長を務めた山越教雄佐原教会長は、力強くこう語った。「同悲・祈り・布施という『一食の精神』は、世界中の人々の心に届く普遍的な価値があります。さらに支援の輪が広がっていくよう、今後も『一食』の推進に力を注ぎたい」。

スリランカ内戦

1983年、シンハラ人とタミル人の対立を発端に始まった内戦。2009年に政府軍が反政府武装組織「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)を制圧し内戦の終結を宣言した。26年間続いた内戦による死者は7万人以上。約28万人が国内避難民となった。