【ルポ】苦難乗り越える人々の力に 一食研修ツアーでスリランカ紛争帰還民支援事業視察

立正佼成会による一食(いちじき)研修ツアー「スリランカ紛争帰還民支援事業」が7月31日から8月6日まで実施され、本会会員ら12人がスリランカを訪問した。同国は26年間に及ぶ内戦により甚大な被害を受けた。本会一食平和基金は、パートナー団体であるNPO法人「JEN」(ジェン)を通じて、2009年から北部地域で帰還民支援を開始した。内戦の終結から8年。人々の生活状況や事業の現状を、ツアーの内容とともに紹介する。

共に考え、共に行動する

インド亜大陸の南東に位置する、人口2000万人ほどの島国・スリランカ。近年、アジアの新たなリゾート地として急速に開発が進んでいる。

一方、都市部から離れた北部州では、長年続いた内戦の爪痕がいまも色濃く残っている。今回、一行が訪れたのは内戦の激戦地だったキリノッチ県とムライティブ県。広大な原野には、爆撃を受けたままの状態の家屋や弾痕が残るヤシの木が放置され、かつての戦闘の激しさを物語っていた。

直径3.6メートル、深さ10メートルの大きな井戸は、乾季でも干上がらない

ここに暮らすほとんどが少数派民族のタミル人で、スリランカ国内での長い避難生活を終え、故郷に帰還して再定住した。内戦によって郷土は荒廃し、家財や農機具を全て失った状態から元の生活を取り戻すには時間がかかる。

こうした帰還民の生計回復支援を目的に、JENは昨年までに45基の農業用井戸を建設、農機具や苗・種などの配布を行ってきた。さらに道路事情などにより、支援の手が行き届かなかった7地区に農業協同組合を設立。重要なコミュニティーづくりの場となったほか、農作物の加工や販売など住民らの収入向上の一翼を担う。

一行は、2班に分かれ、オスィヤマライ地区とムハマライ地区の農協を訪問。本会が取り組む「一食を捧げる運動」(月に数回の食事を抜き、その食費分を献金するもの)について隊員が説明すると、オスィヤマライ農協のタンガラーサ会長(58)は、「これまで支援は政府からのものだと思っていました。皆さんが食事を抜き、身を犠牲にして支援してくださっていることを知り、勇気が湧きました」と語った。

JENが支給した食品乾燥機。数時間でドライフードが完成する

その後、隊員たちは両農協で販売するドライフード作りに取り組み、収益向上に向けた食材選びや商品の包み方について現地の人々と意見交換を行った。
その場にいた女性メンバーたちが、早速、新パッケージの試作を始めた。その様子を見たJENスタッフの太田千晶さん(32)は「彼女たちのこんな積極的な姿を見たのは初めて」と驚きの表情を見せた。「自分たちの商品を自分たちの手で良くしたいという気持ちに火がついたのですね。こうして時間を共有できたことが何よりの支援だと思います」。太田さんの言葉に隊員たちは、現地の人々の主体性を育む「自立支援」の重要性をかみしめた。

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