人と人とのつながりが「いざ」という時、いのちを守る――信仰活動と防災力

【須崎教会】

細やかな手どりがもしもの時の備えに

 

「どこに、誰がいるのか」を明確にして、会員と密につながろうと手どりに回る

「大切な会員さんをお預かりしている」――。そんな思いを胸に、須崎教会は「フォローマップ」という総手どりに取り組んでいる。各支部の支部長、支部会計、主任を中心に、毎月10日の「一斉布教」をはじめ、日頃の手どりを通して会員全世帯の現状把握に努めている。

7年前、須賀一雅教会長が同教会に着任。東日本大震災での支援経験を踏まえ、南海トラフ巨大地震の危険が高まる四国でも、もしもの時に会員の安否確認を慌てずに行えるよう、「どこに、誰がいるのか」を明確にして会員同士のつながりを密にしていきたいと、教会全体で「フォローマップ」に重点を置き、取り組みを始めた。

最初の1年は、会員カードを名簿に起こすところからスタート。名前や住所、電話番号などを一覧にし、次の1年で主任が中心になって受け持ちの地区を一軒一軒回った。「会員カードに名前しかないような人もいて、最初は苦労しました」と話すのは、高知県の四万十川流域を包括する土佐中村支部の支部会計(76)。組長や主任経験もあるベテランだが、総手どりを通して所在不明の会員の多さに心が痛んだ。「高齢になって施設に入るような人もいて、主任さんらが気にかけて誰々さんはどこの施設にいるとか、県外に行ったとか報告してくれるので、縁が切れないよう念じて名簿を更新しています」。

名前や住所、電話番号といった個人情報が印字された名簿には、よく見ると手書きの文字で、家族の有無や通院歴、デイサービスの利用日など細々とした情報が加筆されている。須崎支部の支部長(59)は、総手どりが始まってからの2年間で、主任らと協力して735世帯を回り切った。そうして集約された会員情報は「主任さんの汗と涙の結晶。布教の生命線です」と話す。

2年間の総手どりで得た経験と会員情報は、後にくるコロナ禍を乗り切る糧となった。教会道場の閉鎖中も、対面での手どりこそ自粛したが、幹部らが自主的に電話やメールに切り替えて会員への声かけを行い、ポスティングや郵送で機関紙誌の配布も続けた。70代、80代の主任らが率先してスマートフォンを持ち、毎月10日の「一斉布教」には、ご命日式典の動画を各自で視聴した後に電話布教を行った。

今年に入り、行動制限が緩和され、個別訪問のルールに沿って少しずつ対面の手どりを再開。自粛を経て顔を合わす喜びをかみしめる一方で、高齢会員の健康面への影響が大きいと、津野支部の主任(55)は感じる。受け持ちの梼原(ゆすはら)地区は、愛媛県との県境で、会員宅の多くが山間部にある。コロナ禍が落ち着き、一人暮らしの97歳の女性会員を久しぶりに訪ねると、会話の端々に違和感を覚えた。「認知症が始まってしまったのかな」と思い、総手どりの中で縁を結んでいた次男の嫁に連絡。その後、大阪から戻った長男が一緒に暮らしているという。

「行った先で出会った人が今日のご縁」との須賀教会長の言葉を、支部長は手どりの前に支部会計や主任らと繰り返し確認している。手どり中、高齢会員が自宅で倒れていることも一度や二度ではないと言い、日頃から近隣住民や家族ともつながっておくことで、「災害に限らずさまざまな緊急時にも迅速に対応できるようになりました。警察や役所の方にも、佼成会の人がいてくれてよかったと声をかけて頂き、日頃の手どりがもしもの時の力になると実感しています」と手応えをかみしめる。

10月上旬、伊豆諸島沖の地震で、四国の沿岸部に津波が到達した。8月にも大雨の影響で土砂崩れが起き、山間部の道路が通行止めになった。そうした時、会員から届く「うちは大丈夫」「心配ないきね」という連絡に助けられると支部長。「一方通行の手どりで終わらず、相互につながれることがフォローマップの功徳だと思います」。今後は会員名簿を地図に落とし込むのが目標だ。

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