「普門館とわたし」特別編――識者の思い(2)

中は、てっきり、ロープでも張られていて、舞台上を下手から上手へ、5,000席の客席を眺めながら、時間制限にあわせて移動させられるものだとばかり思っていたのだが、まったく自由だった(客席の天井部分が耐震強度不足なので、客席には降りられない)。しかも楽器持参OK、舞台上での演奏自由、入れ替えもなかった(混雑時、少々、入場を待たされたが)。そのため、いつまでも多くのひとたちが、昔の「吹奏族」のように突発的な合同演奏を楽しんでいた(わたしが行った時は、「宝島」を何度も演奏していた)。

わたしは、1964年の東京オリンピックの閉会式を思い出していた。何の制限もなく、自由に世界中のひとたちが、国立競技場で交流する姿は、子供心にも忘れられない。あれに、どこか似ていた。多数のスタッフが要所にいたが、立ち入り禁止エリアに入りかけたひとを注意する程度で、あとはおかまいなしであった。スマホでの写真撮影も、積極的に手伝ってくれた。

今回のイベントで感じたことをもう一つ――佼成出版社が刊行している児童向け絵本に『虹の橋 Rainbow Bridge』(絵・訳/葉祥明)がある。すでに2007年に刊行された本だが、最近、TVドラマの中で、この絵本と同じエピソード(先に逝ったペットは、天国の手前にある虹の橋のたもとで、飼い主が来るのを待っている)が紹介されたせいもあり、人気が再燃しているようである。いうまでもなく普門館はペットではないが、これだけのひとたちに愛され、惜しまれて記憶に残れば、まさしく虹の橋のたもとで再建されたようなものだと思った。

これもしばしば書いてきたが、わたしは自宅が近くだったので、この建物を建築中から見てきた。そしていま、まさか、最後も見ることになるとは、夢にも思わなかった。その最後を、こんなに気持ちよく迎えられるとは、これまた予想しなかった。関係各位に心からお礼を言いたい。(寄稿)