ドライバーに捧げる「六波羅蜜」
〈5〉禅定(ぜんじょう) 「名ドライバーが得られる心の広さ」
運転中、ドライバーは、予測できないさまざまな出来事を経験します。自分の車の直前で事故が起きた、急に飛び出してきた。何が起こるか分からないのが私たちの走っている道路です。
- 『友人を自宅まで送った時のこと。道路の真ん中に50センチメートル四方ぐらいの段ボール箱が落ちているのに気づきました。仕事で急いでいる時の自分ならば、もしかしたら、はね飛ばしていったかもしれません。でも、この時は迷わず徐行して、段ボール箱をよけました。通り過ぎる時、何げなく段ボール箱の中をのぞくと、中に小さな男の子がいるではありませんか。顔からみるみる血の気が引いていきました』(M.Kさん・65歳・男性)
予測できない事態に出遭うと、人の心は混乱します。動転してさらに悪い事態を招くことも少なくありません。
では、どんなことが起こっても迷ったり動揺したりしないドッシリとした精神を培うにはどうしたらいいのでしょう。仏教では、「布施」「持戒」「忍辱」を一心不乱に精進することによって、目の前の出来事をあるがままに見、その本当の姿を発見できる静かな心が、自然に備わってくると教えています。これが「禅定」です。
この「禅定」こそ、名ドライバーが得られる心の広さ、力であり、その人の人生を間違いのない方向に進めてくれる原動力となるのです。