ドライバーに捧げる「六波羅蜜」

〈6〉智慧(ちえ) 「この世の真実を見つめられるドライバーになろう」

この世の真実の姿とはどんなものでしょうか。ドライバー一人ひとりの生命も、また全ての人の生命もみんなに生かされ、みんなに守られ、みんなに助けられて存在しています。ですから、全てが尊いものばかりであり、ダメなものはひとつもないとお釈迦さまは教えています。この真実を知ることが、「六波羅蜜」の最後、「智慧」です。

「この世の中は、みんなが助け合い、支え合っている思いやりの世界なんだなあ。いい世界だなあ」。そうした心境でハンドルを握るとすれば、きっと全ての人に感謝でき、見るもの聞くものが生き生きと感じられ、自然と安全運転を心がけられるに違いありません。

私たちが日ごろ乗っている車に対しても同様です。車にも生命を発見していくのが「智慧」の教えです。皆さんが、いま運転しているその車は、考えてみると皆さんと一緒に人生を歩んでいると言えないでしょうか。車のおかげで無事仕事もでき、生活もできる。そこに気がつくと、車にも愛情が芽生え、毎日車に語り掛けるような心境にきっとなるはずです。そんな血の通った世界をいつもかみしめ、ドライブしていけば、事故もなくなり、ドライバー自身の人生もどんなに豊かになっていくか分かりません。

ハンドルを握っている皆さん、名ドライバーになってください。交通事故のない社会を目指して。そして一人ひとりの人生のために――。