特集・ありがとう普門館(1) 厳しくも愛おしいホール、それが普門館だった 大阪府立淀川工科高校名誉教諭・吹奏楽部顧問(一般社団法人・全日本吹奏楽連盟理事長) 丸谷明夫

普門館で行われた、最後のコンクール(2011年)。東日本大震災が発生したこの年、スローガンは、『響け!復興のハーモニー』(写真提供=(株)大阪フォトサービス)

小手先で繕ってもあかん

全国大会で5年連続金賞を受賞すると、次の年の大会で特別演奏ができる制度が以前にありました。憧れの普門館に特別演奏の枠で出場することは生徒たちにとって、名誉なことです。淀川工科高校は80年の大会から4年連続で金賞を取り続けましたが、最後の1年、金賞に届きませんでした。賞を意識するあまり、小手先で繕おうとしてスケールの小さい演奏になったのかもしれません。「小手先で繕ってもあかん普門館」を痛いほど思い知らされました。

翌年からも4年連続で金賞を受賞することができました。迎えた5年目、金賞を逃した5年前の記憶がよぎりましたが、賞のことは頭に入れずに思いっきり「大阪の心意気を見せようやないか」と生徒たちと話し合いました。選んだ曲は「大阪俗謡による幻想曲」(作曲・大栗裕)でした。金賞を受賞し、翌年の特別演奏の枠を獲得できました。私たち演奏者の心意気までも受け止めてくれた、それもまた普門館でした。

生徒に夢を与え、悔し涙にくれた普門館――厳しいホールだったからこそ、愛着もまた深いものがあります。たくさんの思い出をありがとう。

プロフィル

まるたに・あきお 1945年、滋賀県生まれ。指揮者。64年に大阪府立淀川工業高等学校(現・淀川工科高校)に赴任し、吹奏楽部顧問を務める。2011年から名誉教諭。一般社団法人全日本吹奏楽連盟理事長。大阪音楽大学客員教授。12年4月14日、普門館で行われた最後のコンサートとなった東京佼成ウインドオーケストラ「特別演奏会」で指揮を務めた。