エネルギー転換を図るドイツの事例に学ぶ(1) 政府に「脱原発」を提言した倫理委員会のメンバーが講演

倫理委員会がメルケル首相に提言した主な内容は、次のようなものだ。「原子力発電所の安全性は高くても、事故は起こり得る」「事故が起きた場合に、他のどのエネルギー源よりも危険である」「次世代に廃棄物処理などを残すのは倫理的問題」「原子力より安全なエネルギー源がある」「再生可能エネルギーの普及とエネルギー効率性を高める政策で、原子力を段階的にゼロにしていくことは将来の経済のためにも大きなチャンスになる」など。その後、ドイツ議会は11年6月、提言に示された22年末までの原発の完全廃止を決定した。

講演の中で、シュラーズ氏は、地球温暖化はドイツ国民の大きな関心の一つと説明。「脱原発」とともに「脱石炭、脱石油、脱ガス」を段階的に実施しながら、50年までに、1990年と比較して二酸化炭素の排出量を85~90%削減する取り組みが進められていると語った。

再生可能エネルギーに転換が図られた後、17基あった原発のうち、すでに10基が停止。10年当時、原子力は総発電量の23%を占めたが、16年には約13%に低下した。一方、17年現在、再生可能エネルギーは倍増して総発電量の33%に及ぶと詳述。「エネルギー転換はドイツの“霞ヶ関”だけで決めているわけではなく、市民や各自治体が主体となって推進された、草の根からもたらされたものです」と話し、その背景には、「原発でつくられた電気を何も考えずに使っていた」との反省から再生可能エネルギーの推進のために取り組んだ先駆者たちの努力があったと強調した。

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