エネルギー転換を図るドイツの事例に学ぶ(2) 今後、求められる進路とは

トークセッションでは、左から鎌仲氏、シュラーズ氏、満田氏が登壇

『ドイツはどのようにして脱原発に舵(かじ)を切ったか』をテーマに2月27日、東京・渋谷区にある聖心女子大学ブリット記念ホールで行われたミュンヘン工科大学のミランダ・シュラーズ教授による来日講演会。当日は講演後に、トークセッションが行われた。同氏に加え、映画「六ヶ所村ラプソディー」「小さき声のカノン――選択する人々」の監督を務めた映像作家の鎌仲ひとみ氏、国際環境NGO「FoE Japan」事務局長の満田夏花氏が登壇し、ドイツや日本のエネルギー政策の現状や今後の展望について意見を交わした。今回は、トークセッションの模様を紹介する。

日本では、エネルギー政策基本法に沿って政府がエネルギー基本計画を策定するが、東京電力福島第一原子力発電所の事故後、2014年に発表された同基本計画では、原発を「重要なベースロード(基幹)電源」とした。原発の再稼動に対し、主要な経済団体からは「歓迎」の意が伝えられている。また、マスメディアの報道によると、政府は現在、エネルギー基本計画の見直しを進めており、30年においても原発を「重要な電源」とし、原発事業を継続しやすいように、政府が制度面などで「環境整備」を進める方向で調整しているとのことだ。再生可能エネルギーは「主力電源」との位置づけになるという。

これに対し、原発の安全性は向上していても深刻な事故への懸念は消えず、再稼動に反対の市民は多い。今年3月には野党4党が「原発ゼロ基本法案」を衆議院に共同提出した。

ミュンヘン工科大学教授のシュラーズ氏

一方、世界では再生可能エネルギーの開発が進み、発電のコストは減少傾向にある。世界150を超える国や地域が加盟する国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が今年1月にまとめた報告書によると、2010年から17年までに太陽光発電のコストは73%減少。陸上の風力発電は23%下落した。コスト低下の要因として、技術の進歩、市場の拡大、開発企業の競争が挙げられ、20年までに、太陽光発電のコストはさらに半減する見通しで、優良な太陽光、陸上風力発電は、火力発電より安くなると予測されている。

当日のトークセッションでは冒頭、コメンテーターを務めた満田氏が日本の現状を説明。ファシリテーター役の鎌仲氏が「日本では原発がないと経済が失速すると言われる。ドイツではどのような政治的決断がなされたのか」と問題を提起した。これを受けてシュラーズ氏が、ドイツが「脱原発」を選択した背景や原発をめぐる世界的な状況について詳述した。

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