バチカンから見た世界(26) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

“苦言を禁じる”

ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世やベネディクト十六世は、夏休みをイタリア北部のアルプスやローマ郊外カステルガンドルフォの避暑宮殿で過ごした。一方、「貧者の選択」をした現教皇フランシスコは、夏のバカンスには行かず、自身の居所として定めた「聖マルタの家」(バチカンを訪問する聖職者の宿)で毎日を過ごしている。

バカンスに行かない教皇の心中を察するバチカン詰めの記者の中には、バチカン改革の敵に囲まれ、教皇の気分は暗いのではないかと憶測する者もいる。こうした記者の憶測を真っ向から否定するように、「苦言を禁じる」というポスターが教皇の居所の扉に張り出された。7月14日付のイタリア紙「ラ・スタンパ」が報じた。

ポスターには、「この禁止を破る者は、自身の気分を害し、問題解決の能力の低下に苦しむ」と明記されている。また、「子供たちの前で苦言をもらす者に対する処罰は倍増されるべき」とし、「自分の良さを引き出すには、自身の限界ではなく、自らの可能性に集中し、苦言をやめ、生活を改善するために行動せよ」との文言が踊っているという。

ポスターは、同国の心理学者のサルボ・ノエ博士が6月14日、バチカンでの一般謁見の席上、彼の著書と共に教皇に手渡したもの。その際、教皇は「私のオフィスの扉に貼る」と約束したとのことだ。

教皇の居所で懇談した一人の神父がこのほど、教皇の許可を得て撮影し、報道関係者に配布した。バカンスに行かなくとも、バチカン改革の敵に囲まれていても、教皇の意気は高く、皮肉の精神も失っていない。