技術の非武装化を 教皇のAIメッセージ(海外通信・バチカン支局)

バチカン記者室は8月11日、ローマ教皇レオ14世が、2027年の元日に世界のカトリック教会で執り行われる「世界平和祈願日」のテーマとして、「技術を武装解除し、平和に仕える。予防的責任としての政策」(仮訳)を選んだと発表した。
教皇は、同祈願日に向けて公表するメッセージの中で、「全人類に向けて、“技術の非武装化”から始め、人間の尊厳性を促進し、平和の構築に貢献するように奨励」と述べる。「戦争を道徳的に受容できるものにするアルゴリズムは存在しない」と主張する教皇は、「人工知能(AI)を軍事使用する危険性」について警告する。その上で、「人間の生命や諸国民間での共存に関わる問題の前では、国際共同体が、人間の責任と人間の基本原則にまつわる、分かち合われた合意(国際協約)を成立させていくように」と訴える。教皇が今年の5月に公表したAIに関する回勅「AI時代における人間性の保全」(「Magnifica Humanitas(マニフィカ・フマニタス)」、ラテン語で「素晴らしき人間性」の意)の中で主張した、中心テーマそのものだ。

さらに、教皇は21日、バチカンで「国際カトリック立法者のネットワーク」の第17回年次会議の参加者と謁見(えっけん)した。今年の同会議のテーマは、『人間の尊厳とAI:課題、機会、そして制御』だった。彼らへのスピーチの中で教皇は、AIの開発と発展について「前の世代が想像さえしなかった地平を切り開いた」と評価しながらも、それぞれの技術的達成が「人類に道徳的問題を突き付ける」と警告した。「何ができるかだけではなく、何をしなければならないか」の問題でもあるのだ。
あらゆる技術開発に共通する決定的な問いは、「技術が人間を、より友愛的で責任感ある存在へと成長させることができるかどうか」だと、教皇は主張する。だから、「健全なる立法制度」は、「科学的、技術的な創造性を奨励する一方で、基本的人権と自由を擁護していかなければならない」のだ。新興技術の使用者が搾取されないよう擁護し、個人のプライバシーを守り、透明性を保障するのみならず、民主制度の強化に資するものでもある。だが、人間の尊厳性を基盤とする友愛の精神に沿って開発・利用される新興技術という枠組みを構築するためには、「強力な法制度」が必要であると教皇は呼びかける。
さらに、「新興技術に関する倫理的枠組みや、分かち合われた社会正義の標準(スタンダード)への適合について、地方、国内、国際レベルでのオープンな討議の展開」を奨励し、「AIシステムが内包する価値観が、特定のイデオロギーや利害関係によって独占されてしまわないように」と願った。この視点から教皇は、AIの開発が、「貧困諸国の富裕諸国への新たな依存を生み出す」ことに警鐘を鳴らす。そして、「技術革新が、イデオロギー的または経済的な植民地主義の手段にならないように」と願った。「カトリック教会は、強権の文化に対して、“愛の文明”を提唱する」からだ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)





