佼成病院 事業譲渡にあたって

「真観」の理念 今後も

佼成病院院長 市村正一

当院の理念は、庭野先生(庭野日敬開祖)が提唱された「真観」を掲げています。「正しくみて、正しく手当てする」という意味合いですが、これは、診療における究極的な理念だと言えます。

病院は患者さんに信頼されなければなりません。信頼されるためには正しい治療を行うことが重要ですが、まず正しく診断する必要があります。患者さんが求めているのは「真観」その一点であると言っても過言ではありません。医師は患者さんや病気に対し謙虚で、常に自分の診断に誤りはないか疑うなど、正しい診断ができるよう努力を怠ってはなりません。また、既往歴はもちろん、仕事や家族構成、家庭内の様子に至るまで総合的に理解することも、的確な診断を下す上で肝要です。

佼成病院は、いろいろな意味で患者さんに寄り添う、優しい病院ではないでしょうか。良い例が小児科診療です。中野区や杉並区では将来を担う小児の診療が十分でない病院が多い中、当院は杉並区の病児保育にも協力していますが、さらに2022年4月からは24時間365日、小児科診療ができる体制にしています。その実績が認められ、昨年10月に東京都の小児二次救急医療機関に指定されました。

その一方で、病院として最も重要な使命である、患者さんに最新で最良の医療を提供することに関しては、立正佼成会を母体とする従来の経営方針でその使命を果たせるのか、理念である「真観」をしっかりと実践できているのかは、残念なことにやや疑問が残ります。今後も、急性期病院として地域の中核病院の使命を果たしていくには、大幅な構造改革が必要になると考えます。そうした観点から見て、今回の経営譲渡という立正佼成会の英断を、私たちも真摯(しんし)に受けとめています。

当院は4月1日より「杏林大学医学部付属杉並病院」として再スタートします。新病院となっても、「真観」という佼成病院の理念は基本精神として引き継いでまいります。「真観」は、繰り返しになりますが、医療における最もシンプルかつ本質をついた理念です。加えて、私自身は「最良の医療は健全な経営から」との考えも大事にしています。経営面が安定しないと医療に必要な投資ができません。それは患者さんに提供する医療の質に直結します。患者さんに優しい医療を継続しつつ、さらに経営を安定させ、優秀な医師を集めて最新の医療機器を導入し、地域の皆さんに最良の医療を提供したいと考えています。

先日、中野区弥生町から来られた患者さんがいました。弥生町は旧病院があった地域です。病院創設の頃から長く当院を信頼し、ご利用頂いているのだと、とてもうれしく思いました。今後も、地域の皆さまに信頼される病院、安心安全にかかれる病院を目指して努力してまいります。

理念である「真観」の二文字が佼成病院に飾られている

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