ニュージーランドのモスク銃乱射事件 キリスト教諸教会、イスラーム機関が声明(海外通信・バチカン支局)

ニュージーランド・クライストチャーチにある二つのモスク(イスラーム礼拝所)で3月15日、銃乱射事件が発生し、50人が犠牲になった。実行犯のブレントン・タラント容疑者(28)はインターネット上に犯行声明を出し、白人至上主義、反イスラーム、反移民を訴えて犯行を正当化しようとした。同容疑者は、これまでに移民やムスリム(イスラーム教徒)に対するテロ攻撃を実行した犯人の氏名を、犯行に使用した自動小銃などに記していたと伝えられる。

ローマ教皇フランシスコは17日、バチカン広場での正午の祈りの席上、今回の事件に触れ、「犠牲になった人々、負傷した人々と彼らの家族のために祈る」と発言。同時に、イスラーム共同体と市民社会への連帯を表明し、「祈りと、憎悪、暴力に対抗する平和のうちに結束しよう」と呼び掛けた。

一方、エジプト・カイロにあるイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」は15日、事件を「神の家」への蹂躙(じゅうりん)と定義し、人類に対する「警鐘」であるとの声明文を公表。「世界各地で見られる、人種主義による扇動的なスピーチとイスラーム恐怖症がもたらした危険な兆候」として非難した。

世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トゥヴェイト総幹事も同日、この恐るべき犯罪は全ての信仰者に向けられたものであり、「人間性と平和共存に対する攻撃である」との声明文を発表。「WCCは全てのムスリム、特にニュージーランドに暮らすムスリムとの連帯を表明する」とし、この事件の背景にある「危険なイデオロギー」を非難した。さらに、ニュージーランドの聖公会やカトリック教会からも、事件を非難し、イスラームとの連帯を表明する声明がそれぞれ発表された。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)