「第36回庭野平和賞」 ノートルダム大学名誉教授のジョン・ポール・レデラック博士に

昨年、ウガンダ・ジンジャで、ヒューマニティ・ユナイテッドが支援する活動に携わるアフリカの青年平和リーダーたちと ©John Paul Lederach

一方、ノートルダム大学クロック国際平和研究所(インディアナ州)やイースタン・メノナイト大学(バージニア州)の教授として人材育成にも注力。90年からはイースタン・メノナイト大学紛争変革専攻大学院(修士課程)の創設に携わり、初代部長を務めた。94年には、同大学に正義と平和構築センターを設立した。さらに、招へいされて、オックスフォード大学やハーバード大学、スペインやグアテマラの大学でも平和学や紛争学の講義を受け持ち、世界各地で後進の育成に努めてきた。

現在は、慈善団体「ヒューマニティ・ユナイテッド」の上級研究員を務め、コロンビア真実和解委員会の諮問委員にも選出されている。著書は24点に及び、日本では『敵対から共生へ――平和づくりの実践ガイド』(ヨベル)が出版されている。

レデラック博士の功績は国際的に高く評価され、2002年にはアメリカ心理学会による「モートン・ドイツ紛争解決賞」、06年に、ポリテクニカル大学(ニカラグア)の「マーティン・ルーサー・キングJr.賞」を受賞。14年には、カナダのセント・ポール大学から名誉博士号が授与されている。

庭野平和賞の受諾メッセージの中でレデラック博士は、愛と慈悲の実践に根ざしたメノナイトの伝統を自らの生き方の根幹にし、多様な信仰を持つ人々と共に人生を歩んできたことを述懐。今回の受賞について、「私たちの愛する地球家族が、憎しみ、分裂、そして排除を超えて、本当の癒やしをもたらす絆を創るための大きな励ましを与えてくださいます」と言葉を寄せている。

庭野平和賞委員会「委員一覧」

▼委員長=アン・ジェウン氏(韓国、キリスト教、韓国YMCA評議会理事長)▼庭野日鑛・庭野平和財団名誉会長▼スーザン・ヘイワード氏(米国、キリスト教、米国平和研究所「宗教と包摂的社会」部部長)▼ハルシヤ・クマラ・ナヴァラトネ氏(スリランカ、仏教、セワランカ財団理事長、仏教者国際連帯会議理事長)▼サラ・ジョセフ氏(英国、イスラーム、ムスリムのライフスタイルマガジン「emel」CEO兼編集者)▼ランジャナ・ムコパディヤーヤ氏(インド、ヒンドゥー教、デリー大学東アジア学部准教授)▼フラミニア・ジョバネッリ氏(イタリア、キリスト教、ローマ教皇庁人間開発のための部署次官)

レデラック博士の提唱する「Conflict Transformation」(紛争変革)について

熊本大学大学院の石原明子准教授の報告などにあるように、紛争の解決や平和の構築について研究する学術分野で「Conflict Transformation」という英語は、「紛争変容」と訳されることが多いものの、レデラック博士の著書の翻訳では「紛争変革」(水野節子、宮崎誉共訳)とされ、このほか、「紛争の転換」(ヨハン・ガルトゥング著、奥本京子訳・伊藤武彦編集)、「紛争移行」(オリバー・ラムズボサム著、宮本貴世訳)などあり、翻訳は定まっていません。このため、記事では、庭野平和財団の発表と博士の著書の翻訳に沿い、「紛争変革」としています。