深淵の崖に立つ中東情勢に挑戦する世界宗教者平和会議(海外通信・バチカン支局)

世界教会協議会(WCC)のプレスリリース(4月10日付)と、バチカンの公式ニュースサイトである「バチカンニュース」(13日付)は、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際委員会と欧州ムスリム賢人評議会が協力し、9日に対面とオンラインを併用した国際会議を開催して、40人を超える世界の宗教指導者、代表者が参加したと伝えた。
発表された『中東およびイランにおける平和に向けた緊急要請 諸宗教による共同声明』と題する合同声明文には、同国際共同議長であるアブダビ平和フォーラム(アラブ首長国連邦/UAE)のシェイク・アブドラ・ビンバイヤ議長、立正佼成会の庭野光祥次代会長、トルコ・カルケドン長老府主教のエマニュエル府主教、シャンティ・アシュラムのヴィヌ・アラム会長、また同国際共同会長のチャールズ・ボー枢機卿(カトリック・ミャンマー・ヤンゴン大司教)、ボスニア・ヘルツェゴビナ・イスラム共同体サラエボ・グランド・ムフティのネザド・グラバス博士、中央アフリカ・バンギのカトリック大司教であるディウドンヌ・ンザパラインガ枢機卿、アブダビ「アブラハムの家」のデービッド・ローゼン特別顧問(ユダヤ教ラビ)ら13人のWCRP/RfP国際委の執行委員会メンバーと、賛同者として9人の諸宗教指導者が署名した。
声明文では、世界の諸宗教指導者と代表者が「心を一つにして」、「人類家族が危険な深淵(しんえん)の崖に立っている今、我々の宗教が平和の構築者としての勇気を見いだすように呼びかけられている」と主張する。また、今年2月28日に発生した米国とイスラエルによるイラン攻撃は、すでに数千人の死者を出し、数百万人の市民が離散する状況に陥っており、さらに、湾岸諸国に対してはミサイル攻撃や空爆が実行され、戦線はレバノン、イエメンへも拡大しつつあり、「聖地とその周辺地域が何の罪もない人々の血で染められています。これは、すべての人に宿る尊い生命のきらめきを冒瀆(ぼうとく)する行為です」と訴える。
こうした状況下では、「長期間にわたる極限的な危険性が残る」と警鐘を鳴らし、住宅や学校、病院、工場、文化遺産、数十億の信徒たちの礼拝の場が破壊や損傷を受けていると憂慮を表明。イラン、イスラエル/パレスチナ、レバノン、湾岸諸国などの地域では、一般市民が死者を葬ると同時に、シェルターに避難したり、離散して難民となったりすることを余儀なくされ、人道危機は拡大し続けており、数百万人の市民が生活に最低限必要な基本的なインフラを失う危険性もあると伝える。
さらに、この中東における戦争が、「他の諸国を巻き込み、弱体化してしまった国際秩序の網を破壊してしまう危険性がある」と指摘。ホルムズ海峡の封鎖は原油市場と供給網を混乱に陥れ、世界中のより傷つきやすい人々の経済的破綻につながると訴える。核開発施設周辺への攻撃は放射能災害の懸念を招き、環境破壊が進むことにも憂慮を表明し、国際法を尊重しないことが、「問題解決に対する能力を困難にしている」とアピールした。
こうした状況下で、世界の諸宗教者は、4月7日から8日にかけて発表された「2週間の条件付き停戦」を歓迎するとともに、「正義にかなう恒常的和平へ向けてのプロセス」として5項目を提案した。第1は、イスラエル、米国、イラン、それぞれの国の同盟勢力などによる、あらゆる地域での「即刻で持続性のある包括的停戦」。第2は、中東と世界の非核地帯構築に向けた努力、相互の安全保障、代理戦争の停止、戦争破壊の責任の明確化、諸国民の安全と尊厳性、自決権に対する正当なる希求の尊重などについて討議する「包括的な外交折衝の展開」だ。
第3には、赤十字社、赤新月社、国連諸機関、諸非政府組織、世界全諸宗教団体によって展開される、「世界レベルでの人道援助の迅速化」を挙げる。第4は、相互理解を深めるために人と人の交流を促進し、互いの痛みや恐怖を認め合う「信頼構築と経済的連携の強化」。最後の第5に、諸宗教、諸国家、諸文化を通して促進されていく連帯を構築する「長期的な道義的・法的責任」を挙げ、その実現によって、「人と人との関係の中で尊厳が何よりも大切にされる、平和な世界を受け渡していこうではありませんか」と呼びかけた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)





