「第36回庭野平和賞」 ノートルダム大学名誉教授のジョン・ポール・レデラック博士に

2015年、ノートルダム大学での講義 ©Kroc Institute/University of Notre Dame

大学院在学中の86年から、中米・ニカラグアの先住民族ミスキート族の「先住民族東海岸抵抗運動(YATAMA)」とサンディニスタ政府との自治権付与問題に調停委員として関わり、和解に貢献。以降、90年代にはソマリア、北アイルランド、コロンビア、フィリピン、2000年代はタジキスタン、ネパールなど武力紛争の激化する地域で調停や平和構築に尽力した。

各地での活動の経験と、「人権といのちを徹底して尊重する」信仰観を基に、レデラック博士は80年代から、「紛争解決」に代わる「紛争変革」の理論を提唱した。よく用いられる「紛争解決」では、対立や衝突といった問題の事象に焦点を当て解決に取り組むが、「紛争変革」は、その解決にとどまらない。問題の背景にある人間関係や社会の状況をも視野に入れ、対話による相互理解を促進して公正や正義の実現を図り、真の和解を目指す独自のアプローチを取る。

また、「紛争解決」では、対立、衝突がある状態を「平生ではない」と捉えるが、「紛争変革」では、紛争は人間の生の一部であり、対立や衝突を機に、公正や正義にかなうより良い状況に変革する営みこそ、平和と捉える点に特長がある。

レデラック博士は、この理論を生かし、対立する両者の文化的、社会的背景を尊重しながら暴力や破綻を防ぎつつ、対話の枠組みを築き、建設的な仕組みづくりにつなげていった。同時に、紛争地域において、市民から政府関係者、反政府勢力の指導者に至るまで幅広い層を対象にした平和構築トレーニングや和解プログラムを主導。「紛争変革」の理論を発展させて開発したプログラムは数百に及び、実施国は35カ国に上る。

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