一人ひとりが平和の礎に「ゆめトモ交流プログラム」

「ゆめトモ」MCL奨学生の声

アルパラピー・アワル(19)

両親ときょうだい5人の7人家族で、ムスリムの家庭です。父は川で漁業を営んでいますが、台風などの荒天時には捕獲量も減少し、収入は安定しません。食事はほとんど一日に2回。なかなか満足に食べることができないでいます。

僕の住む地域では、紛争が絶えません。6歳の時に起きた紛争では、僕の家族を含む集落の4家族30人が、およそ50キロの道のりを歩いて避難しました。避難先では、木で簡単な骨組みをつくり、そこにビニールシートを被せたテントで寝るのですが、雨が降ると地面は湿ってしまい、移動の疲れもあって体が痛くて、よく眠れませんでした。まるで森の動物のような暮らしで、惨めでした。このような避難を3回経験したのですが、そのたびに、どうして紛争が起こるのかと考えて、悲しくなりました。

日本から届いたゆめポッケを受け取ったのは2011年。紛争に巻き込まれていた時で、11歳でした。布製の袋を開けると、中にロボットが入っていました。初めて手にしたおもちゃで、本当にうれしかった。今も大切にしていて、部屋に飾っています。

紛争の連続で人を信用できなくなっていた僕にとって、人に思いをかけてもらえる喜びを味わい、相手を信じることができるきっかけになりました。うれしくて、希望や勇気を持つこともできました。ゆめポッケは、僕の人生を大きく変えてくれたのです。

小学4年生の時、MCLの奨学金を受けられるようになり、ゆめポッケに入っていたノートやペンを使って一生懸命に勉強しました。今は、大学の教育学部体育科に進学しています。将来の夢は高校の教師になることです。教育を通して、子供たちに勉強だけでなく、人間としての正しい生き方を伝えられると思うからです。僕の出身地域では麻薬に手を出す大人が多いのですが、子供たちが手を出さないよう、麻薬の怖さを伝えたいのです。人との間で何か問題が生じた時、暴力に訴えるのでなく、対話によって平和的に解決する道を教えたいとも思っています。教育を通して子供たちの環境を変え、紛争や貧困だけでなく、汚職や麻薬がはびこるフィリピンの社会を変えていきたいのです。

今回、日本で皆さんと交流して、どんな思いでゆめポッケを作っているかを深く知ることができました。この体験を、帰国したらMCLの他の奨学生や地元の友達にも伝えます。